リクルートコミュニケーションズが、「組み合わせ最適化問題」の解法の1つとして研究されている「量子アニーリング」を利用し、広告分野への最適化問題の応用に取り組んでいることが紹介された。その成果が東京で開催された「Adiabatic Quantum Computing Conference(AQC2017)」で公表された。
日本発の新たなテクノロジである量子アニーリング。カナダのベンチャー企業D-Wave Systemsがこのテクノロジから量子コンピュータを実現し、これを利用して日本の企業が応用を進める。なんともむずがゆい気持ちにもなる一方、ワクワクする話でもある。
今回は、別の量子アニーリングに注目した自動車部品などを手掛ける、デンソーの動きを紹介しよう。
筆者の率いる東北大学の研究チームと早稲田大学の田中宗氏、そしてデンソーの先端技術研究所の3者が量子アニーリングの基礎的な側面にとどまらず、応用研究を進めてきた。
手前味噌になるが、当該研究についての成果を日本物理学会で公開しており、独自の技術を確立して特許についても次々とそれらの出願を終えている。成果に関する学術論文の投稿も終えたところだ。
そして次は、「量子コンピュータが人工知能を加速する」技術をまさに生み出している。そんな心が踊る研究の舞台から、生の声をお届けしよう。
この量子アニーリング研究に従事するデンソー先端技術研究所の岡田俊太郎氏と寺部雅能氏にインタビューした。まずはデンソーがなぜ量子アニーリング・量子コンピュータに注目したか。そこから聞き出してみた。
ーー早速ですが、自動車部品メーカーの大手であるデンソーが量子アニーリングに興味を持ったきっかけは何ですか。
岡田:2年前、D-Wave Systemの記事を見つけたことです。私は大学時代に超電導理論の研究をしていたので、まさか超電導の量子コンピュータが商用化される日が来るとは……と大興奮でした。
そこで、初めは興味本位でしたが原理を考案した東京工業大学の西森秀稔教授にコンタクトを取り、量子コンピュータに使われている量子アニーリングという技術を知ったのがきっかけです。
寺部:世の中でIoTにより取得可能な情報量が飛躍的に増え、データ解析の重要性が高まってきていますが、デンソーも例外ではありません。
その中で、最適化の技術が競争力の要になっていくと考えます。大量のデータをいかに料理して利益を最大化する最適な対策を見つけ出すかが重要であると。そこに使える技術を探していたところに、この量子アニーリング技術に出会いました。
量子アニーリング研究に従事するデンソー先端技術研究所の寺部雅能氏(右)、岡田俊太郎氏(左)