本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NECの川島勇 代表取締役執行役員常務兼CFOと、大塚商会の大塚裕司 代表取締役社長の発言を紹介する。
「大きなポートフォリオの見直しは一段落した」
(NEC 川島勇 代表取締役執行役員常務兼CFO)
NECの川島勇 代表取締役執行役員常務兼CFO
NECが先頃、2017年度第1四半期(2017年4〜6月)の連結決算を発表した。同社の最高財務責任者(CFO)である川島氏の冒頭の発言は、その発表会見で、同四半期の当期損益が2008年以来9年ぶりに黒字になったことに関連して語ったものである。
同社によると、2017年度第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比12.3%増の5825億円、営業損益は144億円の赤字(前年同期は299億円の赤字)、当期損益が78億円(同201億円の赤字)となった。
川島氏は当期損益の黒字化について、「営業赤字の縮小や株式売却益などが要因。ただ、今期がまだ始まったばかりで、黒字化に特段の思いはない」とそっけなく話したものの、9年ぶりに黒字化したことについては次のように分析した。
「9年前の2008年および前年の2007年の第1四半期は収益も着実に確保していたが、その後リーマンショックが起きて業績が大幅に悪化した。そのため、事業構造改革に大なたを振ってポートフォリオの見直しを進めてきた。今回の当期損益の黒字化は、そうした流れの延長線上にある。これによって、大きなポートフォリオの見直しは一段落したと考えている」
冒頭の発言は、このコメントの最後の部分を取り上げたものである。「一段落した」とは、事業構造改革への手応えを示したものといえよう。
川島氏が言うポートフォリオの見直しとしては、2011年に個人向けPC事業を持分法適用会社化した後、スマートフォン事業からの撤退や、インターネット接続サービスのNECビッグローブの売却などが挙げられる。また、この第1四半期でも、NECトーキンやルネサスエレクトロニクスの株式売却を行った。
同氏は、ポートフォリオの見直しが一段落したとの認識を示した後、「今期はやるべきことをやって、業績予想を着実に達成したい」と強調した。ちなみに2017年度通期の連結業績予想は、売上高が2兆8000億円(前年度比5.1%増)、営業損益が500億円(同19.5%増)、当期損益が300億円(同9.8%増)となっている。
NECの連結売上高は、かつてピーク時には5兆4000億円を超えていた。それが2016年度実績では2兆6650億円とほぼ半分になってしまった。ポートフォリオの見直しは、さかのぼれば2002年の半導体事業の分社化から始まっており、売り上げ規模は半分になったものの、選択と集中を繰り返してきた結果、今のNECがある。果たして、これから反転攻勢に打って出ることができるか。注目しておきたい。