展望2020年のIT企業

関心高まるデジタルの世界で働く新しい労働者「デジタルレイバー」

田中克己

2017-10-12 07:30

 契約や申込などの氏名や住所のデータ入力から資料作成、情報収集といった業務処理を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の関心が高まっている。労働人口減少や働き方改革が追い風になり、RPAを活用する企業が急増しそうな雲行きだ。

 RPAビジネスを展開するRPAテクノロジーズの大角暢之社長は、RPAを「デジタルの世界で働く新しい労働者(デジタルレイバー)」と位置づけて、新たな市場の開拓に力を注ぐ。

RPAビジネスに特化するRPAテクノロジーズ

 1970年生まれの大角社長はコンサルティング会社を経て、2000年4月にオープンアソシエイツを設立し、企業の新規事業立ち上げを支援するビジネスを始めた。その1つが、RPAを活用した新しいビジネスの創出である。大角社長の思いは、製造現場は機械化、IT化によって、生産性を大きく向上させたのに対し、オフィス業務の生産性はなかなか改善されないことにある。

 「なぜ、こんなに人がいるのか」と思える職場もある。たとえば、顧客の氏名や住所などを複数のシステムに繰り返し入力する。住所変更があれば、また複数システムに同じデータを入力する。朝早い時間に作業が集中することもある。もちろん、IT化によるオフィス業務の自動化は進んでいるが、すべての業務を自動化できるわけではない。「1日の処理が数件といった小粒な仕事は、どうしても人手に頼る」。そんなIT化の投資効果を期待できないオフィス業務は数多く残っている。

 そんな業務が増えたら、人員を増やすしかない。だが、最近は人材不足と人件費アップが増員に立ちはだかる。そこで、同社は2007年にビズロボ事業部を設けて、ビズロボと呼ぶRPAを活用したロボットの派遣サービス事業を始めた。簡単に言えば、パソコン上にソフトのロボットを立ち上げて、決まった作業手順の事務処理を代行させるもので、ユーザーからは「人の100倍の生産性になり、ミスもしない」などと高い評価を受けた。

 インターネット系企業やコールセンター、事務センターに採用される。24時間365日の受発注処理が可能になり、中国への外注により安価になったeコマース企業の事例もある。

 その一方、「怪しい」「人の雇用をどう思っているか」などと、RPAに懐疑的な声もあった。そんな状況が3、4年続いていたが、ある生命保険会社がRPAを活用したロボット事務センターを開設し、顧客の住所変更から契約のデータ入力などへと適用業務を広げていくとともに、「RPAは怪しいものからまともな技術に格上げになった」(大角社長)。

 そのタイミングをとらえて、2013年にRPAビジネスを子会社化(現RPAテクノロジーズ)し、専門展開することにした。営業先リストの作成や顧客管理などの営業補助、出勤簿管理や契約管理などの総務補助など、ビズロボの活用ユーザーが100社(ロボット数は約4000台)以上に達するという。

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