ドローン(小型無人機)を使ったソリューション事業が立ち上がりつつある。農薬散布、観光地の空撮から設備の点検・監視、災害対策、危険区域作業などへと広がっている。ドローン・ソリューション専業のブイキューブロボティクスは、市場拡大のチャンスととらえて、完全自動運行を実現する新製品を投入し、新しい市場の創造に挑み始めている。
災害対策などへの活用を狙うブイキューブロボティクス
ブイキューブロボティクス(VR)は2015年10月、ウェブ会議システムのブイキューブがドローンのソリューション事業を手がける子会社として設立した。その後、独立したビジネスに育てるため、100%出資から外部資本を組み入れることにした。
そんな折、「ブイキューブの間下直晃社長に一緒にやらないか」と誘われた出村太晋氏は、「新しいビジネスをやれるチャンス」と期待し、2016年4月にVRの社長を引き受けた。電機メーカーやコンサルティング会社などで人材採用、新規事業の立ち上げなどにも携わった出村社長に、ドローン・ソリューションのイメージもできたという。「空撮や農薬散布、土木計測といったラジコン・ヘリを使っている用途や、宅配には興味はない」(同)。
出村社長が期待したのは、工場設備などの点検・巡視、山岳などの捜索・救助、ビルなどの警備・監視、災害など危険区域作業、地震など災害対策の5つ。これらソリューションは、ドローンで撮影したリアルタイムな映像を複数の拠点で共有し、課題解決にあたるもの。ブイキューブが得意とする領域でもある。
例えば、石油プラント工場における火災や地震などの災害対策への活用が考えられる。災害の一次情報を収集し、現場と本社、地元の消防署などが動画を共有し、対策を練る。こうした人が容易に近づけない危険な場所や困難な場所、さらには24時間の監視などが求められる用途だ。しかも、「人を代替するのではなく、人の負荷を軽減するもの」(出村社長)だという。
ドローンの完全自動運行を実現するドローンボックス
VRは、ドローンやカメラの選定から保守、保険など活用に必要な機材やサービスをパックにし、基本料プラス月額料金で提供する。この秋には新しいサービスも加わる。ドローン本体に加えて、離着陸や充電などをボックスに収納したドローンボックスと呼ぶ基地システムだ。あらかじめ設定したルートへの全自動運行を実現するもの。簡単に言えば、ドローンが自動的に目的地に飛び立ち、作業を終えたら戻り、充電する。カメラが撮影したデータを解析する機能も備える。人が何回も現地に行って、繰り返し点検したりする作業を代行するもので、「世界初のサービスで、引き合いはものすごくある」(出村社長)。
例えば、石油タンクのひび割れ点検、工事の進捗管理などだ。毎日同じ時間に飛び、撮影し、その差分からひび割れや進捗状況をつかめる。商品にICタグを付ければ、倉庫の棚卸しに使える。太陽光発電パネルの故障検査にも効果を発揮するという。赤外線センサを使って、パネル1枚1枚のステータスを調べ、故障したパネルを顧客に通知する。ドローンを操作する人らが現地に行く必要もないので、大幅な作業効率化とコスト削減を期待できるという。