ドローンボックスは、約1年前にシンガポールのH3ダイナミクスと提携し、日本市場向けに共同開発を進めていた。最近、日本のユーザーやパートナーに同製品の飛行を披露したところで、ここ1、2年はドローンボックスの顧客開拓に注力する。そのため、直販体制を拡充する一方、SI会社や通信会社などのパートナー企業との協業を推進する。
ドローン・ソリューションの普及への課題はある。「黎明期から普及期にさしかかる段階にあるものの、市場がなかなか顕在化しないこと」(出村社長)。ドローン活用のシーンをイメージするのが難しいからだろうか。どんな効用があるのか分からないこともあるようだ。「それでも1年前に比べて、ドローンの活用を計画する企業は増えている」(同)。そんな企業や地方自治体と実証実験を重ねながら、ソリューションを品ぞろえする。
例えば、仙台市は、雪山の遭難者発見に使う。携帯電話のGPSから遭難場所を特定し、本部や救助隊などがサーマルセンサを搭載したドローンの動画を共有し、遭難者の発見、救助にあたる。神戸市は、崖などの崩落防止に取り付けたネットや補強コンクリートの点検に活用する。関連する担当者らは会議室にいながら、目視と同じように崖の右をみたり、左をみたり、さらに近寄ったりし、問題カ所を探し出す。目視ではとても不可能な高い場所の点検も可能になる。
出村社長は「ドローン活用の専業として、本格的に普及するまで頑張る」と意気込む。社名に掲げたロボティクスの領域も広げていく。ドローンと同じリアルタイムな画像認識、解析するロボットを活用したソリューション事業である。ドローン・ソリューションの本格化時期に注視する。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。