「RPAによる業務改革」成功の秘訣(3)--真のデジタル企業に変革する極意

金弘潤一郎 (アビームコンサルティング)

2018-05-22 07:00

 2018年度に入って企業の年度が改まる中、RPA(Robotic Process Automation)への取り組みが加速している。2017年度の終盤でさまざまなトライアルが実施された。その多くが全社改革への一歩を踏み出しつつある。

 本稿を担当するアビームコンサルティングには、RPAに関する相談が多数持ち込まれている。従来は「RPAとはどういうものなのか」「本当に効果はあるのか」といった内容が多かった。それが最近は「RPAを軸に自社をデジタル化したい」「真の働き方改革に結び付けたい」というように変わってきている。抜本的な改革や組織への定着に向けて具体策が求められているのだ。

 前回「『RPAによる業務改革』成功の秘訣(2)--本格導入を成功に導く5つの論点」は、RPA化を推進するための3つのステップで、本格導入段階を成功に導くポイントを紹介した。今回は最終段階となる「運用定着化」を成功させ、真のデジタル企業へと生まれ変わるための中長期的な視点を紹介する。

図版1

 本格導入までは、ほとんどの企業においてプロジェクト体制で進められるだろう。最終段階の運用定着化では、定常的な形で組織に落とし込んで、自律的な運用がなされる形にする必要がある。そのためには、短期的な目標達成モードから、中長期的な企業変革モードへと切り替えていく必要がある。それらを達成するためには下図に示すように、3つの中長期的な視点を持って検討することが必要となる。

図版2

1.RPA化ビジョンと戦略の策定

 RPAを特定の領域で導入し運用が始まったとしても、それは運用の定着化を盤石にするものではない。特にボトムアップで始められたRPA導入は一定の効果を生み出すかもしれないが、RPAが持つ変革の力を最大限に引き出すことなく失速する可能性がある。現場の局所的改善ではなく、デジタル化を前提とした、たゆまぬ変革の道を進むのであれば、RPA化を一つの戦略として位置付けていく必要がある。

 実際に極めて変化の激しい経営環境に対処すべく、RPAを経営戦略と位置付けて定着を図る企業が多数現れている。今や中期経営計画に「RPA・AI活用」「ロボット化による抜本的な改革」「デジタルによるプロセス改革」といった文言が盛り込まれるケースは枚挙にいとまがない。RPAをしっかりと根付かせるためには、このように企業レベルのビジョンや戦略に引き上げて取り組まなければならない。

1-1.RPA化の真の意味「デジタルレイバープラットフォーム」

 企業戦略や経営方針に組み込むといっても、長期的な視点で考えた場合、「RPAはこれからどのように進化するのか」「RPAの企業内での位置付けはどうなるのか」という新たな疑問が湧いてくるだろう。

 アビームでは、RPAは将来、「デジタルレイバープラットフォーム」へと姿を変えていくと考えている。人工知能(AI)や光学文字認識(OCR)、音声認識といったさまざまなテクノロジが日進月歩で出現する昨今のデジタル環境において、企業は最新のツールを組み合わせて利用することが求められる。それらを手動で操作しているようでは、そのスピード感に追い付いていけない。

 人間の代わりにソフトウェアロボットがデジタルツールと連携すれば、業務に最適なデジタル技術を柔軟に組み合わせて環境変化に対応できるようになる。デジタルレイバープラットフォームがデジタル技術と業務の間の中間層を形成する。このような将来像を見据えて、RPA化を進めていく必要がある。

図版3

1-2.RPAの技術的進化の方向性

 RPA戦略を考える上では、技術的な進化の方向性も意識しなくてはならない。導入したら終わりではなく、今後どのように進化するかを理解し、そのテクノロジを絶えず取り込んでいくべきであるからだ。

 下図は、RPAの技術進化の段階を表している。現在のRPAはまだ「Stage1:Basic」と呼ばれる段階にあり、定型的な業務を代替できるという状況である。今後1~2年の間にRPAは次の段階である「Stage2:Cognitive」に入ると予想されている。この段階に入ると、整理されていないデータを解読しながら処理し、写真や紙データといった非デジタル情報を読み取るなど、より人間に近い認識能力が備わるようになる。つまり、RPA化できる業務が飛躍的に広がるわけである。

 デジタル化の巧拙が企業の競争力を左右する時代が訪れると予想される中、このような技術の潮流を見据えて、ビジネスへの活用を模索する必要がある。

図版4

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