また影響が大きかったのは、この時期に、パソコンからスマートフォンへとコンテンツプレイヤーの主役が変わっていったことだ。ウェブで検索という行為から、スマートフォンアプリでコンテンツを楽しむ方向へと変わった。スマートフォンで海賊版を探すことがパソコンで探すよりもひどく面倒くさくなった。海賊版配信に偏ったアプリを出せば、そのアプリが消されるようになった。
書籍の海賊版については、海賊版撲滅ができておらず、毎年80億元(1350億円)弱の海賊版による被害額がでている。ウェブサイトの文書をテキストデータに変換するサービスやアプリが登場したほか、テキストファイルは小さいことから、海賊版も配信する大手サイトサービスこそ叩かれたものの、中小サイトはもぐらたたきのように潰されては新たに誕生している。書籍は音楽や映像と異なり、協力なコンテンツホルダーがいないことも原因の1つだ。
この調査結果ではなく脱線するが、微信(WeChat)内のアプリ内プログラムで誕生した人気ゲームにそっくりなゲームが大量にリリースされている。コンテンツホルダーが弱く、また模倣しやすい簡単なつくりで、人気プラットフォームに出せるとなると、今も海賊版は大量に出てくる。
となるとスマートフォンが主流の今、「政治的な動き」に加え、「強力なコンテンツホルダー」「海賊版を配信しにくいプラットフォームやエコシステム」こそが、海賊版撲滅に役立ったし、他国でも重要なことではなかろうか。
- 山谷剛史(やまやたけし)
- フリーランスライター
- 2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。