エッジコンピューティングは、Gartnerの2018年版「Hype Cycle for Cloud Computing」(クラウドコンピューティングのハイプサイクル)で述べられているところの「過剰期待の頂」にある。このため、標準的なプラクティスやベストプラクティスが確立され、メインストリームでの採用が始まるまでに、出だしのつまずきや幻滅といった多くの落とし穴に陥る可能性がある。本記事ではまず、現在の状況をまとめるとともに、評価してみたい。
言葉の定義
エッジコンピューティングは、「フォグコンピューティング」という、門外漢の間で混乱を引き起こしがちなもう1つの言葉と関連付けられる比較的新しいコンセプトだ。このような混乱を回避できるよう、まずは言葉の定義をしておきたい。
エッジコンピューティングの場合、データの処理と分析を行うためにデータセンターと通信帯域幅を必要とするクラウドコンピューティングとは異なり、データが最初に収集されるネットワークのエッジ周辺で処理と分析が実行される。エッジコンピューティングは(ネットワークのノードレベルで処理と分析を実行するというフォグコンピューティングの1形態であり)、フォグコンピューティングにおける事実上の要素として捉えるべきものである。
(エッジコンピューティングとは)パフォーマンスの向上と、運用コストの低減、アプリケーションやサービスの信頼性強化のために、ネットワークの論理境界に向けたコンピューティング能力の調達である。デバイスと、処理を行うクラウドリソースの間の距離を短くしてネットワークのホップ数を削減すれば、今日のインターネットが抱えるレイテンシと帯域幅の制約が低減され、新たなアプリケーションの世界に向けた扉が開かれる。このことを現実的な言葉で表現すると、今日の中央集権化されたデータセンターと、世界中で増え続けている大量のデバイスの間にある経路に、新たなリソースとソフトウェアスタックを分散させるというものになる。こういった分散は特に、ネットワークのインフラ側とデバイス側のそれぞれの端双方に近い場所に集中されるが、必ずしもその場所とは限らない。
451 Research/OpenFog Consortium
(フォグの)一方の「端」は、フォグにおける分散アナリティクスを実現するために必要となるコンピュートハードウェアやOS、アプリケーションソフトウェア、接続性を備えたエッジデバイスだ(ここでのエッジデバイスとは、自動車や製造設備、「スマートな」医療機器といった、センサデータの源となるデバイスを指している)。フォグの範囲はエッジから始まり、ローカルのデータセンターやその他のコンピュート資産のほか、企業内やMulti-Operator Radio Access Network(MORAN)内のマルチアクセスエッジ(MEC)機能、ホスティングサービスプロバイダーや相互接続施設、コロケーション施設内の仲介コンピューティング/ストレージ機能といった「エッジ近傍」の機能、さらにはクラウドサービスプロバイダーまでをも含んでいる。これらロケーションには統合された、あるいはホストとなる「フォグノード」が保持される。なお、これらのフォグノードは、全体的な分散アナリティクスシステムを構成する能力を有したデバイスだ。