アマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)が公共分野向け事業に本腰を入れ始めた。競合するクラウドプロバイダーとの激しい顧客獲得合戦が繰り広げられそうだ。
2019年は公共分野における“クラウド元年”
「メディアの皆さんの前で私どもの公共分野向け事業の取り組みをきちんとご説明するのは、これが初めてだ」――。AWSジャパンの宇佐見潮 パブリックセクター統括本部長は、同社が先頃開いた公共分野向け事業についての記者説明会でこう切り出した(写真1)。
写真1:会見に臨むAWSジャパンの宇佐見潮パブリックセクター統括本部長
そう言われると、確かにこれまでAWSジャパンの公共分野向け事業についての話を聞いたことがなかったかもしれない。折りしも、同社にとってクラウド事業で最も宿敵となる日本マイクロソフトも昨年来、この分野に注力している印象がある。
その背景には、日本政府が少子高齢化に対応し、持続的な経済発展を成し遂げるため、人工知能(AI)、ロボット、IoT(Internet of Things)などを活用した新しい社会「Society 5.0」を、日本が目指すべき未来社会の姿として提唱していることがある。
2018年6月にはそれらを支えるプラットフォームとして政府情報システムを整備する際に、クラウドサービスの利用を第一候補とする「クラウド・バイ・デフォルト原則」の基本方針を発表し、クラウドサービス利用検討フェーズにおける基本的な考え方を示している。
日本マイクロソフトでは、こうした日本政府の方針に沿って、Society 5.0の実現および公共機関におけるクラウドサービスの導入・移行・利用促進にさらに貢献したいと考え、さまざまな支援プログラムを提供している。
では、AWSジャパンはどうか。宇佐見氏は次のように説明した。
「AWSのクラウドは、グローバルの公共分野では広く利用されている。日本においても2017年から同分野の担当部門を立ち上げ、ここにきてようやく体制が整ってきた。日本でもこれまでクラウドの導入は着実に進んできていたが、政府の方針を背景にクラウド推進に向けた機運が高まっている」
さらに、こう続けた。
「クラウドを安心して利用するための各種規制も整備されつつあり、私どももパートナー企業とともに対応している。2019年は公共分野における“クラウド元年”とも言うべき重要な時期だと考えている」