松岡功の「今週の明言」

新生デル日本法人社長が語った「テクノロジー企業としてのこだわり」

松岡功

2020-10-02 11:10

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、デル・テクノロジーズ代表取締役社長の大塚俊彦氏と、電子情報技術産業協会 ソリューションサービス事業委員会 委員長の馬場俊介氏の発言を紹介する。

「私たちは人類の進化を牽引するテクノロジーを創出していく」
(デル・テクノロジーズ代表取締役社長の大塚俊彦氏)

デル・テクノロジーズ代表取締役社長の大塚俊彦氏
デル・テクノロジーズ代表取締役社長の大塚俊彦氏

 デル・テクノロジーズは先頃、デルとEMCジャパンが8月1日に合併して新たな会社としてスタートしたのを機に、今後の事業方針についてオンライン形式で記者説明会を開いた。新会社の社長に就任した大塚氏の冒頭の発言は、その会見で、親会社である米Dell Technologies(以下、Dell)が掲げるPurpose(目的)を和訳した形で述べたものである。

 原文は「We create technologies that drive human progress.」。大塚氏は、日本ではこの親会社のPurposeに加えて、「創出したテクノロジーを価値に変え、日本のお客さまの変革に貢献する真のパートナーになることを使命として事業活動を行っていく」と語った(図1)。

Dell Technologiesが掲げるPurpose(出典:デル・テクノロジーズの資料)
Dell Technologiesが掲げるPurpose(出典:デル・テクノロジーズの資料)

 会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは大塚氏の冒頭の発言に注目したい。

 なぜ、DellのPurposeを大塚氏の明言として取り上げたかというと、今回の会見を聞いて筆者が強く感じたのは、事業方針への意気込みとともに、改めてテクノロジーへのこだわりを前面に押し出していたことだ。Purposeはまさしくそれを象徴するものだというのが、筆者の印象である。

 大塚氏によると、Dellは年間売上高約10兆円、180カ国での社員数約15万人と、IT分野で世界最大規模のベンダーになった。それもさることながら、同氏が強調したのは、研究開発に年間約5000億円を投資し、これまで2万8000件を超える特許を取得申請済みということだった。

 大塚氏とともに会見に臨んだ最高技術責任者(CTO)の黒田晴彦氏は、Dellが研究開発に取り組んでいるテクノロジーとして、未来の経済を形作る5つ(5G/6G、IoT、AI、ブロックチェーン、仮想通貨)を挙げた。

 また、2030年に私たちの生活を形成するテクノロジーとして、「さまざまな場所に置かれたセンサーとIoT」「AI」「モバイルエッジコンピューティング」「XR(クロスリアリティ)と没入型メディア」「5G回線とその未来」の5つを挙げ、こうした方向性を踏まえて図2に示した4つのトランスフォーメーションを支えていくために新しい技術開発を行い、それらを製品に組み込んでいくと説明した。

Dellが取り組むテクノロジーの方向性(出典:デル・テクノロジーズの資料)
Dellが取り組むテクノロジーの方向性(出典:デル・テクノロジーズの資料)

 振り返って、かつてのDellは注文生産方式で直接販売するビジネスモデルが売りだったPC専業ベンダーで、その当時に取材した際、研究開発投資も無用なコストと捉えていたことを鮮明に覚えている。そこから業容が広がるにつれ、研究開発にも取り組むようになり、Dell Technologiesが設立された2016年には、社名をテクノロジーズとするほどになった。

 筆者は、Dellの最大の強みは「顧客規模」だと捉えている。従って同社の使命は、特定のテクノロジーに秀でることではなく、幅広い最新技術を自らの顧客に提供し続けていくことにあると考えている。これは大塚氏が語っている使命と同義だと感じた。引き続き、同氏の経営手腕に注目していきたい。

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