新型コロナウイルスが蔓延し、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためのクラウドへの移行が加速する中、従来型のIT支出(オンプレミスデータセンター用の機器やソフトウェアライセンスの費用)は減少している。
大手エンタープライズITベンダーの最新の業績発表から分かることがあるとすれば、それは従来型のIT支出が急速に減少していることだろう。
IBM、SAP、Intelの発表からは、需要が急速にクラウドに移っていることが見て取れる。Microsoftの発表からも同様のことがうかがえる。その結果、これらの企業のビジネスモデルの移行がスムーズに進まないケースも出てきそうだ。
SAPの第3四半期の業績は、IT調達のパターンが変化していることを如実に示すものだった。SAPによれば、同社は顧客の需要の変化に対応して、想定していたよりも早くクラウドに製品を移行することを検討しているという。
SAPの最高経営責任者(CEO)Christian Klein氏は、次のように述べている。
新型コロナウイルスが2020年以降に経済に与える影響は、誰にも予測できない。しかし最近の状況の変化を見ると、現状のような比較的緩やかな回復を想定した方が賢明だろう。当社のオンプレミス事業に関して言えば、2020年中は、影響が大きかった一部の業界に加え、すべての業界や地域で大幅な投資の遅れがみられており、クラウドへの移行の加速に対する需要が高まっている。クラウドへの移行が加速していることから、今後はソフトウェアライセンス収入も今の水準からさらに縮小すると予想している。
IBMのCEOであるArvind Krishna氏は、次のように述べている。
顧客は引き続き、現在の環境に関して、短期的な課題と変革のチャンスのバランスを取っている。また短期的には、業務運営の安定性とキャッシュの維持に重点を置いている。この現象は、特に当社のソフトウェアライセンスの大型契約案件や、一部のサービスプロジェクトの遅延に表れている。