Red Hatが、「CentOS」の位置付けを変更し、「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」の安定したクローンではなく、ローリングリリースのLinuxディストリビューションにする、すなわちRHELの次期マイナーアップデートの先行版リリースにすると発表した際、多くのCentOSユーザーは憤慨した。こうしたユーザーをなだめたい同社は米国時間1月20日、小規模本番ワークロード向けと、顧客の開発チーム向けにノーコスト版のRHELを新たに用意すると発表した。
Red Hatは今回の発表の冒頭で、同社がかなり以前から開発者向けの「Red Hat Developer」プログラムを通じて、CentOS Linuxの代替となるノーコスト版のRHELを提供してきたと記している。ただ、その利用条件はこれまで、1台のマシンを用いる開発者に限られていた。しかし今回、同プログラムが拡大され、RHELの「Individual Developer」サブスクリプションは、最大16の本番環境システムで利用可能になる。
これは無償かつセルフサポート型のRHEL製品だ。入手するには無償のRed Hatアカウントを用いてサインイン(あるいはGitHubやTwitter、Facebookといったアカウントを通じてシングルサインオン)した後、RHELをダウンロードし、アップデートを受け取るだけだ。
同社は、このプログラムを発表するブログ記事に「他には何も必要ない。これはセールスプログラムではないため、営業担当者がフォローアップとして連絡してくることもない。サブスクリプションの中で、フルサポートへ簡単にアップグレードするための選択肢は用意されているが、その利用はあなた自身の判断に任されている」と記している。
これに加えて、拡大されたRed Hat Developerプログラムを利用することで「Amazon Web Services」(AWS)や「Google Cloud Platform」(GCP)、「Microsoft Azure」を含む主要パブリッククラウド上でRHELを稼働できるようになる。もちろん、クラウドプロバイダーに対しては通常のホスティング費用を支払う必要がある。しかし、RHEL自体は開発および、小規模本番ワークロードの双方で無償となる。
改定されたRHEL向けのIndividual Developerサブスクリプションは、2021年2月1日までに利用可能になるという。
開発者に関係する話としてRed Hatはさらに、Red Hat Developerプログラムを拡大し、開発チーム全員が容易にこのプログラムに参加し、その利点を享受できるようにするとしている。これにより、既存のRHELサブスクリプションを通じて、開発チームを無償でこのプログラムに追加できるようになる。
その結果、RHELは組織レベルの開発プラットフォームとしてより手が届きやすいものになるだろう。さらに、このプログラムを通じて、「Red Hat Cloud Access」経由でのRHELの配備が可能になるため、AWSやGCP、Azureを含む主要パブリッククラウド上で、クラウドプロバイダーによって課金される通常のホスティング費用を別にすれば、追加費用なしでRHELを利用できるようになる。