テレワークにも使うヘッドセットの企業管理を考える

教育現場で理想的なヘッドセットの運用管理

岩岸優希 (Poly)

2021-12-10 06:00

 これまで、企業がヘッドセットを購入・管理することの重要性について述べてきました (第1回記事第2回記事。最終回である今回は、教育業界において急務となっているICT環境の整備においてのヘッドセット、ウェブカメラ、ビデオバーなどのオーディオ・映像機器の管理方法について考えてみましょう。

 政府の「GIGAスクール構想」が具現化へ向けて進む中、新型コロナウイルス感染症の影響は、教育現場にも押し寄せています。感染拡大の第5波が押し寄せた2021年9月、2学期の授業開始が延期されたり、急きょオンライン授業を導入したりする学校が増えました。しかし、アクセスが殺到して授業に必要な学習コンテンツのクラウドサービスのサーバーがダウンしたり、オンライン授業用ツールへの接続状況が不安定になったりと、まだ課題があるのが現状です。

自治体を上げてICT教育環境整備に取り組むケースの増加

 公教育では、家庭環境によらずあらゆる生徒に平等な教育機会を提供することが求められています。PC、タブレット端末、クラウド環境と、オンライン授業に必要なICT環境は幅広くあります。

 自治体を上げてICT環境の整備に取り組むケースも出てきています。1人1台のタブレット端末を児童や生徒に提供し、さらにそれらを活用するため、教室でWi-Fi環境の整備が進んでいます。さらに、感染拡大期にも自宅からオンラインで授業を受けられる体制を作るため、「Microsoft Teams」や「Zoom」などのウェブ会議アカウントを取得することで、リモートから参加できる環境も広がってきています。そして、これらの環境を活用することで、生徒が学校を休んだり、万一新型コロナウイルスに感染して隔離対象になったりしても、後から授業の録画を見直すことが可能です。

 このように一部の自治体、学校でPC・タブレット端末の1人1台の配布が少しずつ進む中、安定的な通信環境の整備も課題となっています。インターネット環境を見直し、Wi-Fiのアクセスポイントを増やすなどして、同じ時間帯に数多くの生徒がアクセスしても、遅滞なくオンライン授業を受けられる環境を整えることが求められています。

 そこで環境整備の一環として、教員・児童または生徒に統一したヘッドセットを提供することを視野に入れても良いでしょう。PCやタブレット端末を1人1台提供するのはハードルが高い場合でも、ヘッドセットなら比較的調達が容易で、全生徒に同一の機材を提供できる可能性が高いでしょう。

 スムーズなオンライン授業のためには、ヘッドセットの違いにより授業が聞こえづらい、発言が届かないなどのトラブルを極力避けることが重要です。こうした問題は、教育現場ではまだ注目されていないですが、ビジネスシーンでは既に重視されており、「機器の設定は会議前に済ませておくこと」が暗黙の了解となっています。学校でも予定通りに授業を進めるため、こうした機器の設定に時間と手間を取られないようにすることが、これからはスタンダードになってくるはずです。

 また、最近注目されている、耳の健康維持も考えていくべき課題でしょう。このようなオンライン会議や授業の時間が一日に長い割合を占め、安価なイヤホンを使用することにより、耳の健康被害、いわゆる「イヤホン難聴」も増えてきています。それを受け、世界保健機関(WHO)と国際電気通信連合(ITU)は、2019年に「H.870 Guideline for safe-listening devices/systems」(安全なリスニングデバイス/システムのためのガイドライン)を策定しました。このガイドラインでは、「音曝露許容量」は、大人より小児の方がより厳しい基準になっています。1日当たりの騒音量の制限などの機能がある適切なヘッドセットを学校側が購入することで、耳の健康被害を防ぐことができます。

 日々刻々と変わる社会情勢の中、教育現場にもアジリティー(俊敏性)が必要になるでしょう。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

  4. クラウドコンピューティング

    生成 AI リスクにも対応、調査から考察する Web ブラウザを主体としたゼロトラストセキュリティ

  5. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]