「企業のIT利用環境においてクラウドサービスのメリットを最も享受できるのはSaaS」というのが、この分野を長年取材してきた筆者の持論だ。だが、メディアなどでよく話題に上るのはIaaS(Infrastructure as a Service)/PaaS(Platform as a Service)との印象が強い。そんなクラウドサービスも全ての企業のワークロードを対象とした本格的な普及はまさにこれから。とりわけ流行りのデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む企業に向けて、クラウドベンダーは協力してSaaSの魅力をもっとアピールすべきではないか。
SaaSの活用で「変化し続けるビジネス環境に対応」
「SaaSビジネスは二桁成長を継続し、『キャズム』を超えた1年だった」
写真1:日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏
日本オラクルでSaaSに相当するクラウド・アプリケーション事業を統括する常務執行役員の善浪広行氏は、同社が8月8日にオンラインで開いた同事業の戦略説明会で、2022年度(2022年5月期)のビジネスについてこう振り返った(写真1)。
同社はクラウドサービス事業として、IaaS/PaaSの「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)とPaaSの「Oracle Cloud Applications」(OCA)を展開しているが、とりわけOCAはOCIがベースとなっていることから、Oracleのソフトウェアとして培われてきた特性の全てが盛り込まれたサービスともいえよう。
そんなOCAの日本市場での展開について、善浪氏は「個人的な見解」と前置きしながら次のように述べた。
「日本企業の多くは今、DXに懸命に取り組んでいるが、これからやらなければならないことのボリュームの大きさや、旧態依然とした進め方を見ていると、期待している成果を出すのはなかなか難しいのではないかと危惧している。そこで申し上げたいのは、DXのツールとしてSaaSを有効活用すれば、どのような変化にも柔軟に対応していけるようになるということだ。DXはすなわち企業の変革そのものだが、『絶え間なく変化し続けるビジネス環境に対応できるようにすること』も大事な要素だ。私たちはSaaSでそんな日本企業のお客さまに貢献していきたい」(図1)
図1:変化し続けるビジネス環境(出典:日本オラクル)
この後、同氏が会見で説明した2023年度(2023年5月期)の事業戦略については速報記事をご覧いただくとして、上記の発言で個人的な見解と前置きしたのは、「SaaSがDXに有効である」との見方について自身の思い入れと解釈しているとも推察される。が、筆者は全く同意する。この発言を聞いて、筆者の頭に改めて浮かび上がってきたのが、冒頭で述べた「クラウドサービスのメリットを最も享受できるのはSaaS」という持論である。