リアルコムは10月2日、ナレッジマネジメント(KM)ソフトウェアの新製品「REALCOM AskMe Enterprise 8.5日本語版」の出荷を開始したと発表した。
同製品は、リアルコムの米国子会社であるRealcom U.S.が2008年4月に買収完了を発表したAskMe社が米国で開発、販売を行っていたソフトウェアの日本語版。AskMeは、1999年9月にMicrosoftからのスピンアウトメンバーを中心にシアトルで創業したKMソリューションの専業ベンダーだった。
AskMe Enterpriseは、企業内に存在する「専門性」を軸に、その専門性を持った人物の持つ知識(ナレッジ)の効率的な管理と流通をサポートするためのパッケージアプリケーション。Active Directoryと連携するプロフィール管理機能、メッセージング機能、ドキュメント管理機能、Q&Aコミュニティなどを含むコミュニティの運営管理機能、ならびにこれらのコンテンツを横断的に検索できる検索機能などを含む。検索機能は、マイクロソフトが2008年4月に買収を完了したファストサーチからOEM提供されているもので、コネクタオプションを利用することにより、検索対象をAskMe内部から、ファイルサーバ、Exchange、Lotus Notes、Documentumなどへも拡張できる。
リアルコム、マーケティング統括の砂金信一郎氏は、AskMeの特長として「専門性の管理」「業務課題の解決」「情報アクセスの最適化」の3点を挙げた。
「専門性の管理」は、組織を構成するメンバーの持つスキルや知識を管理するための機能を指す。職務経歴や資格といった個人プロフィールに加え、その人が過去に作成したコンテンツの一覧や、それらのコンテンツに付加された「タグ」によって、分類や管理が行われる。AskMeには、やりとりしたメッセージ、メールの内容や、その人が作成した文書のクローリングから、タグに相応しいキーワードを推奨する「オート・プロファイリング」機能も備わっている。
「業務課題の解決」は、AskMeで管理されるコンテンツの流通プロセスを「ルール」として設定できる機能だ。何が、どのような条件の場合に、どう処理されるべきかといった内容で設定でき、例えば、Q&Aコミュニティにおいて一定期間回答のない質問を管理者に転送し、適切な担当者への振り分けを依頼したり、コンテンツの投稿や返信にあたって、上長の承認を得るといったルールの適用が可能となっている。
3点目の「情報アクセスの最適化」については、前出の検索機能による、複数のファイルサーバや文書管理システムを横断するコンテンツ検索によって実現されるという。
砂金氏は、リアルコムのKM製品である「KnowledgeMarket」と「AskMe」の違いについて「重なる領域もありつつ、最適な適用分野が異なる」と説明する。KnowledgeMarketは「ストック型の形式知の管理」、AskMeは「専門性を持った個人の知識やスキルのフロー(流通)」に適しているとする。後者の代表例は、製造業における開発研究部門での利用などで、実際に米国ではP&Gなどでの導入実績があるという。
リアルコムでは、AskMe日本語版の提供とコンサルティングサービスの提供により、従来のKM、コンテンツ管理分野に加えて、同社のビジネス領域を特に研究開発領域での「イノベーション促進」にまで拡大したい考えという。
リアルコム、代表取締役社長の谷本肇氏は、今回のAskMe買収の意図について、「これまでKM分野において金融や情報サービス、建設業などを中心に、JavaやLotus Notes/Dominoを中心としたビジネス展開を行っていたリアルコムに対し、P&Gなど大手製造業の研究開発部門における導入事例を持ち、Microsoftの.NETテクノロジを基盤とするAskMeのビジネスは良い補完関係にあった」と説明した。AskMeでは、次期バージョンにおいて、ウェブパーツの提供によるMicrosoft Office SharePoint Server(MOSS)とのさらなる連携強化が図られるほか、マイクロソフトと共同のプロモーション活動も展開していく。
REALCOM AskMe Enterprise 8.5日本語版の参考価格は、最小構成(300ユーザー)の場合、サーバライセンスが350万円より。別途、保守契約料、導入サービス費用が必要。