グローバル社会では主体的に自立を確保せよ--米国のIFRSアドプションに潜む思惑 - (page 2)

森川徹治(ディーバ)

2009-08-19 08:00

 しかし、自ら主体的に応用する場合と異なり、法律として強制適用するには、より高次元で明確な国家戦略があって初めて容認されるべきものである。とはいえ、国家戦略が常に企業や市民よりも高度な意志決定に基づくとは限らない以上、グローバル社会への参加と、国家戦略の自立、そして企業戦略の自立を可能とする会計制度の整備がIFRSのアドプションを検討する上でも重要な方向性となる。

 産業の振興・育成においては、連結よりも個々の会社へ働きかける方が影響が大きいことを考えると、連結会計はアドプションするとしても、個別会計についてはコンバージェンスにとどめ、自国の戦略を反映した会計基準の自立を確保するのも一つの解決策である。企業においても、盲目的にIFRSを受け容れるのではなく、グローバル経済社会とIFRSの関係を理解し、自らの事業を発展させるために寄与するかを十分に検討して望むことが重要だ。

持続可能な成長と環境会計

 話を競争優位につながる会計分野に進める。積極的かつ自主的に開発に取り組むべき分野として、「環境会計」がある。

 21世紀初頭は環境の時代と言われ地球温暖化問題に対して、二酸化炭素(CO2)の削減を中心とした取り組みが真剣に検討されている。しかし、会計という視点で考えると、その目的を含め、社会的コモンセンスとして利用に耐えうるだけのものは、ほとんど整備されていないに等しい。

 そもそも、地球温暖化の原因についてはほかにもいくつかの科学的に否定することができない説もあると聞く。現在主流をなしている原因の理解と、その対処が本当に正しいことであるかということさえ断定できていない。

 時間軸を大きく取ると、現代は氷河期と言われる地球環境寒冷期間の狭間にあるらしいが、氷河期は地球規模の動植物の生存許容能力を低下させる。氷河期へのシフトが強くなると今度は、地球寒冷化問題への対応ということにもなりかねない。このような状況下で個々の努力が本当に意味のあるものとなるのか懸念を感じる。

 一方、温暖化という視点ではなく、化石燃料に依存した社会が持続可能であるかという視点で考えると解決すべき問題の対象が異なってくる。化石燃料は有限である。よって、限られた資源が枯渇しないうちに、新たな代替エネルギーを獲得することで、現在の生活水準を大きく損なわずに、経済発展を目指すとなる。地球の温暖化を防止するための活動に比べると、より具体的なテーマと言える。

 現在の工業化社会は化石燃料を中心に急速な発展を遂げた。大量生産技術や、それを地球の隅々まで届ける物流システムは、内燃機関と電力によって飛躍的に発展した。化石燃料からエネルギーを抽出する技術は比較的容易であったことが長く、エネルギー生産技術の中心としてきた。

 しかし、技術は進歩している。さまざまな代替エネルギーの研究開発により化石燃料への依存を少なくすることは現実にも可能である。技術先進国は、発展途上国に対して、より多くの人々を支えることのできるエネルギー基盤を提供することを通して自らの価値を発揮することが可能である。

 天然資源を持たない国が経済的自立を維持するためにも、技術による代替エネルギーの開発を最重要の産業育成課題と位置付ける必要を感じる。併せて、CO2の観点だけではなく、代替エネルギーの生産と効率を測定し、産業育成を推進するための独自の戦略的会計基準を設ける必然性も大いにあると考える。

人的財産をいかに育成すべきか

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