同書では、企業が分析力を武器にするまでの過程を5つのステージに区分し、整理している。
ステージ1は、データ分析活用がほぼ行われていない状況。ステージ2は、データ分析活用は行われているが、部分的あるいは場当たり的に行われている状況。ステージ3は、統合的なデータ収集・分析に着手した状況の企業だ。ステージ4は、全社的な分析力が備わり、活用されているものの、まだ戦略の柱や絶対的に武器にはなっていない企業。そして、ステージ5には、全社的にデータ分析が徹底されて、成果に結びついており、持続可能な競争優位になっている状況の企業が区分される。ステージ5が最上位のステージだ。
あなたの会社はどのステージに入るだろうか。
分析力で勝利するプロスポーツチーム
最上位の「ステージ5」に入る数少ない企業として、MLBのオークランド アスレチックス、松坂大輔投手らが所属するボストン レッドソックス、さらにNFLのニューイングランド ペイトリオッツといった、プロスポーツビジネスの企業が挙げられている点が興味深い。米国のプロスポーツでは、データ分析が競争にフル活用されているのだ。
年俸総額が少ない低予算のアスレチックスは頻繁にプレーオフに進出しているが、その理由は選手の潜在的な可能性よりも、統計の数字を重視しているからだと指摘する。また、レッドソックスは2002年から超一流のアナリストを雇い、2003年にチャンピオンシップ シリーズに進出を果たし、2004年にはついに世界チャンピオンの栄冠を獲得した。当時のエースであるPedro Jaime Martinezについて、アナリストは過去のデータから105球で交代させるようアドバイスしたが、監督が無視して続投させたためにヤンキースに逆転負けしたというエピソードも面白い。この逆転負けが「データを軽視した結果」かどうかについては異論もあるだろうが、データに基づく意思決定は実際にこのような形で身近に行われているのだ。
ペイトリオッツは、コーチだけではなく選手も統計データをチェックすることで知られており、有力チームであるものの、チームの報酬総額は低いという。また、ホームゲームではファンの満足度を高めるために、売店や駐車場、トイレ、係員の対応などについて、スタッフがデータを徹底的にインプットしているそうだ。さすが「ステージ5」の企業だけのことはある。
データを分析することで得られるインテリジェンスをビジネスに活用し、少ないコストで大きな利益を獲得する。今回は、BIの定義と、その取り組みが競争優位につながることについて見てきた。
次回は、BIの取り組みに欠かせない道具である「BIツール」について見ていくことにしよう。