iPadをはじめとしたタブレット端末の普及により、様々な業種の企業が自社のビジネスでのタブレット端末活用を模索し始めている。9月5日には、ヤフーが全社員に計1万台に上るiPhoneとiPadを配布すると報じられた。ソフトバンクがiPadやiPhoneを武器に法人向けのビジネス規模を伸ばす一方、iPad、iPhoneは持たないものの、NTTドコモも法人市場の開拓に力を入れている。
住友生命やアステラス製薬、カタログ販売の事業を手がけるリンベルなど、ドコモが提供する端末を業務用に活用する企業が増えてきた。そこで、法人市場向けの取り組みについて、NTTドコモの法人事業部 法人ビジネス戦略部、事業企画・法人マーケティング担当課長を務める有田浩之氏に聞いた。
NTTドコモの法人事業部 法人ビジネス戦略部、事業企画・法人マーケティング担当課長、有田浩之氏
ドコモの法人営業の体制において、主に大企業向けにはアカウント営業の組織、中小規模の顧客については、代理店経由で営業するケースが多いという。アカウント営業では、まだシステムインテグレーション型の案件が中心とのこと。代理店経由の場合は、導入事例を紹介し、モバイル端末導入の効果を理解してもらうことにしている。
導入事例として、例えば、ベビー用品の販売を手掛ける赤ちゃん本舗では、会員カードの即時発行システムを構築。タブレット端末「GALAXY Tab」に来店客が自ら会員情報を登録し、その情報をFOMA網経由で本社サーバが管理する。
もともと、会員カード発行や更新に伴う手作業によるデータ入力の負担を課題として認識していたが、顧客に直接入力してもらう仕組みにより、かなり軽減した。ペーパーレス化とともに、登録時間の短縮を実現した。
有田氏は、iPadが稼動するiOSを引き合いに出し「(ドコモの端末が稼動する)Androidの方がアプリ開発における自由度がずっと高く、制約も少ない」と指摘する。
例えば、慈恵医大の医師が利用する端末に脳神経外科の医師を呼び出すための機能がある。ドコモが独自に作り込んだAndroidアプリならば、メロディの変更やスヌーズ機能を作り込めるという。「iOSでは“チーン”という一般的な呼び出し音しか実装できない」(有田氏)。「適切な当直医がいない場合などに、該当する担当医を確実に呼び出す必要があるため、細かいようだが、絶対的に必要な機能だった」という。
このように「アプリ開発ではAndroidの自由度は大きい」(有田氏)とのこと。「Androidはアプリ審査が甘く、セキュリティ面に不安がある」などと指摘されることもあるが、ビジネス用途では、企業ごとに端末を細かく作り込みたいという欲求もあるため、Android端末のこうした開発の柔軟さには利点があるようだ。
また、Androidで指摘されるバージョン管理やセキュリティの問題も、「タブレットは3.2、スマートフォンは4.0という現版になり、暗号化やクライアント証明書といった機能が実装されているため、かなり改善してきた」としている。
BYODは現状反応が薄い
法人向けモバイル分野で、現在話題に上がることが多いのは、社員の私物端末を業務用に利用するBYOD(Bring Your Own Device)の取り組みだ。企業としては、社員に配布する端末の数を減らせるため、コスト削減に役立つ。一方で、端末を販売したいメーカーや通信キャリアにとっては、必ずしも歓迎する動きではない。