Appleから「iPad mini」が発表された。7.9インチのディスプレイを搭載したこの小さなタブレットの発表によって、既に確立しているタブレット市場が大きく揺さぶられることは間違いない。その影響は、初代iPadが発表された時の比ではないと予想できる。本記事では、米国時間10月23日のイベントが各方面に及ぼした多様な影響を考察する。
iPad miniはもはや秘密のベールに包まれた存在ではなくなった。
長らく待ち望まれていたこの7インチタブレットは、情報の流出が技術関係の報道機関によって何度も伝えられていたものの、世界が注目するなか、23日に公式に発表された。
小型のiPadとして23日にデビューを果たしたiPad miniには、複数のモデルが用意されている。用意されているカラーはブラックとホワイトの2種類だけだが、片手で楽に持てるサイズのこのタブレットにはWi-Fiのみか、Wi-Fiと4G LTE接続という通信方式ごとに16Gバイト、32Gバイト、64Gバイトのメモリを搭載したモデルが用意されている。なお、LTE接続のためのハードウェアの仕様は「iPhone 5」と同じものとなっているため、LTEが利用可能な4つの大陸をまたがって複数種類のデバイスが用意されることになる。
Appleによる7インチ級タブレット市場への進出は、ライバル企業内に激しいパニックを引き起こすと予想されるものの、その発表自体は寝耳に水というわけではなかった。また、Appleが小型タブレット市場における期待水準を引き上げたのは事実だろうが、その影響範囲は年内には見えてこないだろう。iPad miniが市場にもたらすインパクトは、第4四半期中や次の第1四半期になって初めて見えてくるはずだ。
Appleは23日に発表したiPad miniによって、自社製品の利幅を縮小させたとともに、市場に混乱をもたらした可能性もある。また、IT業界の巨人であるAppleがどのようにしてこの状況を切り抜け、小型タブレット事業(「元からある」iPad事業も含む)から利益を上げていくのかはまだ分からない。このため、iPad miniが各方面に及ぼす影響について考察してみる価値はあるだろう。
勝ち組
Apple:カリフォルニア州クパチーノに拠点を置くIT業界の巨人Appleは、間違いなくこのイベントでの大きな勝者だ。これは言うまでもないだろう。
筋金入りの一部のAppleアナリストですら、この待ちに待ったデバイスについて評価しかねており、市場に出回っているさまざまな7インチデバイスとどのように渡り合っていくのかについて漠然とした答えしか返せないでいる。このデバイスの特徴は、画面解像度ではないし(人気の「Retina」ディスプレイは搭載されていない)、デバイスのサイズとも言い切れない(すっきりと美しいデザインに仕上がってはいるが)。このデバイスは、軽さや極めて薄く作られている点はさて置き、先の報道で搭載されないだろうと伝えられていた4G LTE通信機能を備えている。
しかしAppleはこの他にも、同社の宿敵とも言える企業、特に「Android」タブレットメーカー(例えばサムスン電子やGoogle、Amazonであり、これら3社はいずれも7インチのAndroidタブレットを販売している)が握っているニッチ市場の勢力図を書き換える鍵を握っている。
このタブレットは、製品自体に購買意欲をそそる特徴がなかったとしても、Appleというブランドだけで売れるはずだ。小型タブレットの購入を考えている潜在顧客は、こういったことを口には出さないだろうが、このデバイスの製造原価に上乗せされる価格(つまりあなたや筆者のような人間にとっての価値)を考えた場合、Appleはクリスマス商戦を含むこの四半期において素晴らしい業績を収めるはずだ。