むろん、日本国内での「プラチナバンド」をめぐる騒動で明らかになっていたように、周波数帯のなかにも(不動産の喩えを借りれば)東京の銀座のような一等地もあれば、地方の山林のような土地もあり、単純な量の比較はそれほど意味がないのだけれども。
そのことをざっくり把握するための手がかりになりそうなのが、次に示す2つの図。いずれも情報源は米FCC(連邦通信委員会)だ。
出典:米連邦通信委員会
上の図からは、クリアワイヤのもつ帯域の絶対量の多さがつかめる。その一方で「700MHz」「Cellular」といった日本のプラチナバンドに近いようなところはベライゾンとAT&Tの保有量が多く、対照的にスプリントとクリアワイヤにはそうした部分がまったくないそれほど多くないこともわかる。
12月20日 11時 追記
本記事公開後、下記の図表を見つけた。後述する通り、スプリントは来年6月末に旧ネクステルのiDENというサービスを停止し、iDENに使っていた帯域をFDD-LTE網の展開に使う予定としている。
このiDEN用の帯域が下記の図の800MHz帯にあたる。画像の出典はスプリントがクリアワイヤの買収計画を投資家向けに発表した際のプレゼンテーション資料だ(PDF)。
出典:スプリント
この図にあるように、クリアワイヤの周波数帯を手に入れたスプリントの帯域ポートフォリオは「3階建て」になる。なお、この図が引用されているExtreme Techの記事には、2.5GHz帯のEBS(Educational Broadband Service)の部分について、「これは各地の学校区の所有するもので、企業はそれをリースしてもらって使う形になる……スプリントはこのEBS帯域をつかってネットワークを展開するにあたり、各地の学校区とそれぞれ交渉・契約することが必要になる」といった説明がある。
(追記終わり)
またクリアワイヤ(左から4番目)の棒グラフにある「BRS」と「EBS」については、FCCのウェブサイト(「REBOOT.FCC.GOV」というドメイン名がスゴい)にある周波数帯ダッシュボード(インタラクティブマップ:下図)をみると、前者が「Broadband Radio Service」、後者が「Educational Broadband Service」の略で、両方とも2500〜2655MHz(いわゆる「2.5/2.6GHz帯」)にあることがわかる。
2.5/2.6GHz帯には後でも触れるが、ソフトバンク・スプリントが大手二強と十分に戦えそうだと思わせるだけの潤沢な周波数帯を手にすることは、これらの図からも感じ取れる。また、オバマ政権下でFCCがぶち上げた「National Broadband Plan」——5年以内に新たに300MHzの帯域をモバイルブロードバンド用に振り向ける、などの内容を含む——が、既得権を持つ放送事業者などの抵抗に遭い、それほどはかばかしく進んでいないことなども考え合わせると、帯域の質の優劣の違いはあるにしても、これだけの「量」を確保できるのは大きな意義を持つことに違いなさそうだ。
40億ドルを超えるクリアワイヤの負債
クリアワイヤは2008年にスプリントやインテル、大手ケーブル事業者各社、それにグーグルなどから30億ドルを超える資金を集めてWiMAX網の展開に乗り出したが、サービス展開でつまづき、ここ数年は赤字続きだった。