アップル、グーグルなどへの影響は
以前の記事で「ソフトバンク・スプリントが、4G(LTE)への移行にあたって、差別化のためにどんな乗り物を見つけられるか」と書いた。(関連:ソフトバンクは「教科書通りの破壊」を決められるか)
この点について、スプリントによるクリアワイヤの完全取得が成立すれば、やはりGTIの取り組みを通じて得られる優位性——スケールメリットを活かした調達力の大きさに俄然注目が集まることになるかもしれない。
たとえばアップルひとつとっても、粗利率低下の問題などが何らかの形でクリアできるまでは、チャイナ・モバイルへのiPhone提供を先延ばしにする可能性も高い。けれども、最重要視する市場でサムスンをはじめとするAndroid陣営が台頭するのをいつまでも指をくわえて見ているわけにもいかないだろう。中国(チャイナ・モバイル)に加え、米国と日本でも端末も販売できるとなれば、そんなアップルの肩を叩くことになるかもしれない。
中国のプラットフォーム別スマートフォン市場シェア(出典:Business Insider)
一方、やはり利益分配の問題などからアップルとの取引が成立しない場合、あるいは成立しても過度の依存を避けるために、GTI陣営が主導して端末開発を進めるという可能性がさらに高まるかも知れない。その場合には、やはりグーグルとの関係が興味深いものとなりそうだ。
グーグルは、米国市場ではモトローラという船に呉越同舟する形で、ベライゾンとの「大人の関係」を続けているものの、「Nexus 4」(LG製スマートフォン)をSIMロックフリーで提供したように、いまだに「キャリアニュートラルな端末の提供」という可能性を捨ててはいない様子が伺える。また、NFC技術を使ったモバイル決済について、両社の主導権争いがもつれ、ベライゾンの扱うGalaxy端末でGoogle Walletがなかなか使えるようにならなかったという例もある。
さらに、中国はモトローラにとって米国の次に大きな売り上げのある市場。かつて中国政府とグーグルが衝突した影響で、いまだにGoogle Mapsなどは使えないが、モトローラは代替選択肢(グーグルにとっての競合他社のサービス)を組み込んで端末を提供しているといった話も聞く。グーグルにとっては、総合的な経営判断がかなり難しいものとなりそうだが、モバイル端末と関連の深いローカル広告分野などを中心に、これまでの遅れを取り戻せるチャンスになるかもしれない。