2005年から出てきた「UltraSPARC T1」では、現在では一般的なものといえるマルチコア、マルチスレッディングをやはり業界で初めて採用している。当時プロセッサはクロックスピードを上げることに熱中していたが、クロックスピードは頭打ちになっていた。そこで登場したマルチコア、マルチスレッディングはプロセッサの流れを大きく変えたといえる。
UltraSPARC T1では、暗号化アクセラレータや仮想化技術も組み込んでいる。元サン・マイクロシステムズで、現在は日本オラクルの大曽根明氏(システム事業統括 ソリューション・プロダクト統括本部 プロダクト・マネジメント・オフィス システム製品事業推進グループ チーフテクノロジスト)がこう説明する。
「UltraSPARC T1では、開発当時から仮想化環境を前提に開発している。後付けで仮想化に対応しているわけではない」
今でこそ、企業ITの世界では仮想化技術は当然のものとして認識されているが、2005年以前は、注目されていなかった。さらに、Oracle/Sunになってからの2011年に投入されたSPARC T4は、スレッドの要求に応じてリソースを動的に振り分ける技術のダイナミックスレッディングを採用した。これも業界初になる。
SPARC/Solarisへの投資は拡大
米OracleでSPARCシステムを担当するシニアバイスプレジデントのMasood Heydari氏が、現在のSPARCの優位性を以下のように説明する。
Masood Heydari氏
「金融、製造、通信をはじめ、どのような業種の企業に聞いても、基幹系アプリケーションを稼働させるのは、“RISC+UNIX”のシステムという話になる。現在、SPARCは、この領域でIntelベースよりシェアは小さいが、シェアが首位であるOracle Databaseを稼働させる基盤として、最も普及しているのはSPARCとSolarisの組み合わせだ。というのも、拡張性、信頼性、堅牢性、可用性がいずれも高く、幅広いアプリケーションをサポートしているからだ。アプリケーションの数は、AIXやHP-UX向けのものより多い。仮想化のオーバーヘッドも抑制できる」
Oracleによる買収後もSPARCの進化は続いている。現行のSPARC T4の次世代にあたる「SPARC T5」が10月に開催されたイベントで発表されている。Heydari氏はSPARC T5について「クロック周波数を20~25%向上させており、ピークの帯域スピードも2倍となっている。I/O処理も2倍になっている」と説明する。
SPARC T5では半導体プロセスが28nmに微細化。搭載するS3プロセッサコアの数はSPARC T4の2倍となる16個だ。SPARC T5のプロセッサ間リンクは8本。SPARC T5では8ソケットのプロセッサを直結できる構成であり、これも現行の2倍。性能向上を狙っているのである。加えてSPARC T5では、大規模なシステム環境で必要になる「RAS(信頼性、可用性、保守性)を持つことも設計目標に含まれている」(Heydari氏)という。
Oracle/Sunになってから、SPARCはユーザー企業への約束として「2倍のアプリケーション性能向上を2年ごとに」(大曽根氏)達成することを計画している。すでに今後数年のロードマップも公表されており、SPARC/Solarisへの投資はSun時代よりも増えているという。「Solarisの開発チームも3割ほど多い」(大曽根氏)規模だ。大曽根氏によれば、半導体の設計は数年かかるとし、Oracle/Sun時代になってからの変更を含んだSPARCが登場するのは2015年以降になるという。
ちなみにSPARCの商標を保有しているのは、かつてのSunでも現在のOracleでもない。SPARC Internationalという第三者の組織が商標を保有している。SPARCアーキテクチャは仕様が完全に公開されており、現在のOracleはライセンスを受けている(最初に実装したのがSun)。富士通もライセンスを受けて、SPARCを開発している。スーパーコンピュータの「京」に採用されている「SPARC64 VIIIfx」がそれであり、その最新版となるのが「Athene」という開発コードで呼ばれるプロセッサ「SPARC64 X」だ。
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