「ハイパー節税」問題を担当する米議会の委員会が間もなく終わろうとしている
アップルやグーグルなどの米多国籍企業による「ハイパー節税」の話については、この連載でも過去に何度か取り上げてきた。
税金を払わないIT企業
続・税金を払わないIT企業
ハイパー節税策の先駆者 アップル
アップルの過剰な節税を嘆く地元民
New York Times(NYT)が年明け、この問題を担当する米上院小委員会の調査がまもなく終了しそうだという話を報じた。また、この話題を取り上げたWIREDの記事が米国時間1月7日に掲載されてもいる。
これらの話のなかで目を惹くのは、この調査でもっとも重点的に調べられたのがアップルの節税策の実態だったという点だ。ただし、「アップルに焦点……」という部分は、事情を直接知る複数の関係者の話とあるだけで、同小委員会の委員長を務めるカール・レビン議員(ミシガン州選出の民主党議員)などがどこかの企業を名指しで批判したというわけではない。
一方、事実として挙げられているのは、アップルに加えて、グーグル、マイクロソフト、ヒューレット・パッカード(HP)などもそれぞれ調査されたという点。また、9月に開かれた聴聞会には、マイクロソフトやHPの関係者が呼ばれて証言していたという点については、「レビン上院議員が両社(の税金逃れ)を厳しく批判していた」という記述が見られる。さらに、同議員がこの聴聞会の場でアップルの繰延法人税債務に関し、「2009年〜2011年の3年間で354億ドル超にのぼった」と発言したという記述もある。
この件に関するNYTからの問い合わせに対し、アップルは「多額の法人税(地方税、州税、連邦)を払っている」とする声明を発表。具体的な例として、2012会計年度(同年9月末締め)に納めた連邦法人税が60億ドルに上り、「この額は米連邦政府に支払われた法人税の全体の2.5%(40分の1)に相当する」と主張したという(なお2011年度に納めた法人税は33億ドル)。
これだけの額を一社で負担しているとなると、普通なら「まったくたいしたもの」となりそうだ。しかし、少なくとも今のアップルが超金満企業であることは周知の通り。さらに報道のタイミングも最悪で、「財政の崖」回避に向けたオバマ政権と共和党側の話し合いがもつれにもつれ、妥協案で合意に達したのが大晦日の夜9時前後、あと2〜3時間で時間切れというギリギリのタイミングという背景もあり、NYTはここぞとばかりに「ダブル・アイリッシュにダッチ・サンドウィッチを組み合わせて……」などと書き立てている印象もある。
うがった見方をすると、アップルが重点的に調査されたという記述は、NYTの「手前味噌」という感じがしなくもない。NYTはこの問題を昨年前半に詳しく報じていたし、この記事の書き手が例のチャールズ・ドゥヒッグであることもそう感じさせるゆえんだ。ドゥヒッグはNYTが昨年一年間にわたって断続的に続けた「iEconomy」シリーズの口火を切った書き手だからだ。また、Googleで検索してみても、一時情報を伝えた記事はNYTのものしか見つからなかったので、あるいは小委員会関係者がNYTになんらかの意図でリークした可能性も思わずにはいられない。
さて、本題の話を進めよう。