日本でのG20をめぐる報道は、為替政策とその声明に関するものばかり。もちろんそれも大切なのだが、漏れているトピックはないのか——もちろんある。税金を払わないIT企業と各国政府のせめぎ合いで、大きな進展が見られたのだ。
米国のテクノロジー企業を中心とした多国籍大企業によるハイパー節税対策と、財政難に直面しており少しでも多くの財源を確保したい各国政府とのせめぎ合いについては、これまで何度となく取り上げてきた。
このテーマについて、2月のアップデートを簡単にまとめておきたい。
・税金を払わないIT企業
・続・税金を払わないIT企業
・三度・税金を払わないIT企業
・ついに宣戦布告された税金を払わないIT企業
・ハイパー節税策の先駆者 アップル
・アップルの過剰な節税を嘆く地元民
OECD事務総長が声明を出す事態に
2月12日、経済開発協力機構(OECD)が「課税基盤の浸食と利益移転への対応」("PDF")と題するレポートを公開した。
Bloombergはこの報告書について、多国籍企業のハイパー節税策が各国の課税基盤を弱体化させており、大企業と競争する各国の中小企業(活動の基盤が国内市場にほぼ限られている場合が多い)が結果的に不利な立場に立たされているなどとして、加盟34カ国の政府にこの問題でさらなる協調を呼びかけている、などと伝えた。
また、OECDがこの報告書公表にあわせて発表したプレスリリースには、「ハイパー節税対策は違法行為ではないものの、多くの国の課税基盤を浸食し、税金に関する国際的なシステムの安定を脅かすものである」とした上で、「多くの国で政府や市民が必要最低限のものの確保にも汲々としている現状で、個人と法人の違いに関係なく、あらゆる納税者が相応の税負担を行うこと、ならびに国際的な税金をめぐるシステムの透明性を確保することは非常に重要」などとするOCED事務総長アンヘル・グリアの声明も記されている。なお、この研究報告は「G20の要請で実施された」とも書いている。
ハイパー節税策に断固たる決意で臨む政府
その直後の週末、2月16日と17日にモスクワで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議では、日本の為替政策に関する議論だけでなく、この法人税の問題もしっかり話し合われたようだ。
英、独、仏の3カ国が音頭をとる形で、利益移転の防止と課税基盤確保に向けて「断固たる決意で臨む」という趣旨の声明が発表された。また、今後のスケジュールについては、OECDがまとめた対策案を英独仏が承認した上で、7月に開催されるG20で採択にかける予定だという。
なお、課税基盤については、Reutersが「ダブルアイリッシュ」で有名になったアイルランドの例——通常でも法人税率は12.5%で他のEU諸国にくらべてかなり低い——などに触れながら、「そうしたアグレッシブな節税手法や、結果として生じる低い実効税率も問題だが、それ以上に『そもそも何に課税するか(しないか)』という課税基盤の問題の方がより重要」とする興味深い論点を指摘した。
ただし、この記事では課税基盤の縮小ぶりを示す具体的な数字がなく、かわりに「スターバックスがオランダのアムステルダムに置く欧州本社は、2011年に7300万ユーロの売上を計上しながら50万ユーロの税引前利益しか申告しなかった」「ルクセンブルクにあるアマゾンの欧州法人が2011年に計上した売上は91億ユーロ、それに対して課税対象となる利益は2900万ユーロに過ぎなかった」「同じくダブリン(アイルランド)にあるグーグルの現地法人が計上した売上は125億ユーロ、それに対して課税対象となる利益は2400万ユーロだった」などの記述がある。