前回は、「戦略」「人」「文化」「仕組み」という観点から、ビッグデータ活用による恩恵を最大化するための組織体制について考察した。ビッグデータの特性、そこから求められる効果的な利用方法を考えると、現状の体制を見直すべき企業や組織は多いだろう。
本稿では、前回に続き、ビッグデータを考慮した体制や運営方法について議論する。具体的には、ビッグデータの特性の一つである迅速性(Velocity)の維持に着目する。
求められる迅速な判断と反映
第1回の記事「企業経営から見たビッグデータの3つのV」の振り返りとなるが、ビッグデータは、Volume(量)、Variety(種類・多様性)、Velocity(速度・頻度)でたびたび説明される。ビッグデータを語る上では、いずれも重要な特性であるが、企業経営上、もっとも重視すべきは、Velocity、すなわちリアルタイム性や迅速性である。
経営においてスピードが重要であることは、これまでも語られてきた。現実には、意思決定に必要なデータが出そろうまでに時間がかかるといった制約があり、迅速な経営判断を阻害されるケースが多々あった。あるいは、迅速性を重視するあまり、意思決定に必要なデータが不十分なまま、勢いと勘で判断を下し、痛い目に合うというケースも少なくなかった。
このような経営環境がビッグデータの時代に入り、大きな変化を迎えようとしている。当然、ビッグデータがすべてを解決するわけではなく、常に正しい経営判断を下せるようになるわけでもない。しかし、大容量かつ多様なデータから重要な示唆を速やかに抽出するという点は、大きく変わることになる。迅速な経営判断の条件が1つ整いつつあるということだ。
さらに重要なことは、迅速な意思決定が、迅速に企業活動へと反映されることである。そうでなければ、意思決定の迅速化は無意味である。意思決定を迅速に企業活動へと反映できる仕組み――ビッグデータのシステム的な対応と併せ、これこそが求められるものである。