日本IBMは10月7日、事業戦略説明会を開催した。同日開催のユーザー企業向けイベント「THINK Forum Japan」にあわせ、米IBM幹部が来日し、グローバルでの取り組みをふまえて、日本での事業展開の方向性を説明した。
日本IBM代表取締役社長のMartin Jetter氏は米本社が進めているSmarter戦略を踏まえ、日本IBM自身が組織、コンテンツ、人財という3点から変革を実践し、顧客との距離を縮めるために4つの支社を設けるなどの体制変更を進めたと説明した。さらに、クラウド、アナリティクス、ソーシャルビジネス、モビリティを活用したSmarter ComputingによってIT業界と市場のダイナミクスを再形成するとアピールした。
日本IBM 代表取締役社長 Martin Jetter氏
IBM グローバルテクノロジーサービス担当 シニアバイスプレジデント Erich Clementi氏
デジタルと統合した戦略はあるか
Jetter氏は、日本の630人を含む全世界4500人以上の最高経営責任者(CEO)や最高財務責任者(CFO)をはじめ企業の経営層(CxO)が抱える戦略的課題、関心事を理解、分析することが目的の調査「IBM Global C-suite Study」の結果から、グローバルな企業の動向と日本の企業動向の違いを次のように説明した。
「経営層にとって顧客の影響力の大きさに関してはグローバルでは54%なのに対し、日本では76%と日本企業は顧客の影響の大きさを実感している。ところが、デジタルと実世界が統合した戦略の有無についてはグローバルでは36%の企業があると答えているのに対し、日本企業は24%にとどまる。日本企業は顧客の影響力を強く感じながら、デジタルなさまざまな顧客体験を実践する点では遅れを取っている。ここに日本IBMにとって大きなビジネスチャンスがある。モバイルやソーシャルなど顧客へのマルチチャネル対応は避けては通れないチャレンジであり、それを実現するための柔軟なIT基盤が必須になる」
拡大するデータボリュームへの対応、迅速なスピードなどを実現する柔軟なIT基盤となるのが、IBMのクラウドサービス「IBM SmarterCloud」だ。サービス事業を担当するIBM グローバルテクノロジーサービス担当シニアバイスプレジデントのErich Clementi氏は「われわれのサービス事業は売り上げの57%、利益の41%を占めている」とサービス事業がIBMにとって重要なものとなっていると強調した。
サービス事業を売り上げ、利益の中心とすることに成功した要因として、「サービスオペレーターの専門性がひとつの要因。サービスは製品ではなく公約である。われわれは、この公約を実現するために投資する。600億円のサービス事業に投資している」とClementi氏は説明した。
サービスの中でもクラウドは、従来のITシステムから大きな変化であり、統合基幹業務システム(ERP)や受発注といった企業のバックグラウンドのシステムについても「クラウドや仮想化に対応することが必要で、さらにファイアーウォールの外にある外部のシステムとシームレスに連携できるものでなければならない」と指摘した。
IBMのクラウドポートフォリオとしてはIaaS、PaaS、SaaSに加えビジネス変革を実現するBusiness Process as a Service(BPaaS)までをトータルで提供。その事例として、特に7月に買収を完了したSoftlayer Technologiesの技術を使い、信頼性、柔軟性の高いITインフラを実現したデータホテルのマネージドホスティングサービスの事例を紹介した。