前回の記事で、現代の日本の生きづらさは「日本人の歴史と、欧米式価値観の板ばさみ」によって生まれているのではないかという仮説を立てた。そして、これからの日本社会の方向性としてグローバル経済を目指すグループと、「昔の日本人らしさ」とともに地域社会で生きるグループの共存が必要なのではないかと提唱した。
規模の拡大を求めることが宿命の大企業はグローバル化に対応せざるを得ないが、必ずしも海外とビジネスの関係にあるとは限らない中小企業にとってグローバル化が必須とは言い切れない。海外に販路もなく、英語対応のできる人材が潤沢にあるわけでもない創業時に、いきなり海外を目指すのは簡単なことではない(もちろんITなどのサービス系はいくぶん障壁は低いが)。
事業経営方針と、今後3年程度の起業形態の分類
実際、中小企業庁の発行する中小企業白書によると、創業時の事業経営方針として海外指向を挙げているのは3.2%。過半数が地域社会との共存を目的としている。また、規模拡大より事業の安定性を望む経営者が7割を占めている。
創業期を乗り越え順調に事業が軌道に乗り出した中小企業にとって、海外進出より問題となるのが人材獲得だ。同白書によると2013年3月卒の求人倍率は3.27倍とここ数年改善されてきてはいるが、優秀な人材確保はネームバリューで大企業に劣る中小企業にとって事業拡大に欠かせない重要な要素となる。
そんな「優秀な人材確保」に対して「大企業には真似できない働き方は、企業の競争力となる」とサイボウズの山田理副社長は語る。今回は山田理 副社長にサイボウズ流「働き方論」を聞いた。
自由な働き方を推奨する企業の理想と現実
副社長 山田理氏
選べる3つの働き方
大元「サイボウズさんの人事制度は斬新だとよく話題になりますよね。例えば勤務体系が従業員のライフスタイルに合わせて3種類の中から自由に選べるとか。今回は御社のユニークな人事制度と、それらがなぜできたのか、得られた効果についてお話をおうかがいさせていただければと思います。」
サイボウズの勤務体系
- ワーク重視型(PS2)裁量労働制
- ライフ重視型(DS)月間残業時間40時間程度
- ワークライフバランス型(PS)残業なし、もしくは短時間勤務
こういった制度ができた理由はどのような背景があるのでしょうか?
山田「狙いは"優秀な人にいかに長く働いてもらえるか"です。当社はベンチャー企業ですから、創立当初は「世界を変えたい! 」みたいな仕事大好きを通り越して、仕事中毒みたいな社員が多かったんです。しかし、次第に会社の規模が大きくなり社員の数が増えてくると、そういう人達ばかりでないことに気づきました。離職率が高くなっていったのです。
特にその中でも女性が辞めて行く傾向にあったのです。出産や結婚といったタイミングですね。男性も疲労などを理由に辞めて行く。社員全員が創業メンバーと同じ価値観かと言うとそういうわけではないんですから当然です。それで何とかしないといけないということになったのです」
離職率の改善という目的があったのですね。これらは全社員が自由に選択可能なのでしょうか。また、選択されている比率、男女比などを教えてください。
山田「大半はワーク重視ですね。このような比率です」
- PS2(ワーク重視):72%(18%)
- PS(バランス型) :23%(16%)
- DS(ライフ重視) :5%(4.5%)
※バランス型は月の残業時間が40時間以内 ※()内の数値は女性従業員の選択比率
大元「制度実施後、離職率は低下したんでしょうか」
山田「はい、効果は出ていると考えています」