三国大洋のスクラップブック

年商100億ドルがみえてきたアマゾンのクラウドサービスの共生と脅威 - (page 2)

三国大洋

2013-11-20 07:30

 Om Malikのコラムには、そのほか「AWSの計算処理能力(compute capacity)は、競合14社の合計の5倍以上」「AWSユーザーが同サービスを利用することで省略できたサーバ台数は顧客1社平均400台」「AWSは2006年のサービス開始以来38回も料金を引き下げ」といったティップスも出ている。話の出所が明示されていないので、おそらくAmazon側が出してきた情報だろう。

 なお、GigaOMの別の記事(re:Inventの取材記事)には、AmazonがAWSのインフラ(と、それによって可能になる低料金)を維持するために、自前で設計したサーバやストレージを使っていること(ネットワーク機器についてもまもなく開発とある)、データセンター用に自前の発電所をつくったこと(1カ所につき50MW~100MWが必要)、各データセンターをつなぐファイバ網を確保したことなども書かれている。ただし、GoogleやFacebookの例がすでに知られているから、あまり目新しい話題とはいえないかもしれない。

How Amazon is building substations, laying fiber and generally doing everything to keep cloud costs down - GigaOM

 ベテランジャーナリストのMalikは、1990年代後半に「Business 2.0」の記者をしていた頃の話を覚えていて、「あの頃は、ウェブビジネスを立ち上げようとすると、サーバ、ストレージ、ネットワーク機器、データベース(ソフトの)ライセンス、ウェブサーバなどをそろえるのに少なくとも200万~300万ドル程度の資金が必要だった。

 それ以外に、データセンターの利用料や回線使用料もかかった――つまり、ベンチャーキャピタルの支援がなければ、起業するのはほとんど不可能に近かった」とした上で、「(そうした資金の多くが)Sun Microsystems、Oracle、Microsoft、IBM、EMC、Dell、Compaq/HPといった各社に流れていたものだった」「それが今では、アイデアと知識、それにクレジットカードがあれば(やる気のある人間が)起業できるようになっている」「現在のベンチャー企業を支える存在としてエンジェルやクラウドファンディングなどに注目が集まることも多いが、それと同等もしくはそれ以上にAWSの存在は大きい」などと書いている。

 さて。AWS台頭のあおりを受けたいわゆる「エンタープライズ系IT企業」の1つであるIBMについては、やはりBusinessweekが「クラウド(分野)で危機に直面」という見出しの記事を掲載していた(米国時間15日付)。今年に入ってしばらく続いていた米中央情報局(CIA)のプライベートクラウド受注をめぐって、IBMがAmazonに敗北を喫したことなどを受けた内容だが、「クラウド分野はとても成熟してしまった、あるいはコモディティ化が進んでしまったせいで、IBMが得意とする顧客のハンドホールディング(至れり尽くせりの対応)を必要とする顧客はどんどん少なくなっている」などと書かれている。

IBM Faces a Crisis In the Cloud - Businessweek

 7~9月期に全体の売上が4%減少の237億ドルとなり、うちハードウェアについては17%も売り上げが減ったIBMとしては、約20億ドルを投じて買収したSoftLayerの事業に期待……などとも書かれている。

 だが「自社のクラウドサービスを利用して動いているウェブサイトの数はAmazonよりも27万も多い」("Whose cloud powers 270,000 more websites than Amazon?")というIBMの言い分は「何とも説得力に欠ける攻撃」などと指摘されてしまっている。

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