エスカレートするAT&T対T-Mobileの応酬
そんなT-Mobileが現在パンチを繰り出し続けている相手が、同社にとって「元カレ」的存在のAT&Tだ。Legereはよく「#RANDALL」(AT&TグループCEOのRandall Stephensonのこと)というハッシュタグ入りのツイートでAT&Tのことをからかったりしている。またT-Mobileが8日に開いた報道陣向けイベント――“Uncarrier 4.0”=「脱携帯通信キャリア戦略の第四弾」というフレーズの入った招待状が送付されている――でも、特にAT&T加入者の引き抜きを狙った新たな施策を発表するのでは……といった憶測が飛び交っている。
・T-Mobile CEO teases Uncarrier 4 event, gets punchy with AT&T - CNET
・T-Mobile's 'Project Houdini' rumored to shoulder your ETF - CNET
以前に記したように、AT&Tは2011年に画策したT-Mobileの買収が米司法省などの反対にあってうまくいかず、T-Mobileに70億ドル近い違約金(現金とAdvanced Wireless Servicesの周波数帯)を支払わされていた。この周波数帯と資金がなければ、T-Mobileが大急ぎで進めるLTE網の構築・展開もあり得なかったはずだが、Legereはそのことを逆手に取るような形で「AT&Tがくれた資金と周波数帯を使いながら、われわれは『Uncarrier戦略』の諸施策でAT&Tの顧客を奪った。いったんこちらに流れた顧客を(乗り換えキャンペーンを使って)奪い返せると思っているのか?」といった趣旨のツイートをしてをしていたりもする。
ちなみに、この「乗り換えキャンペーン」というのはAT&Tが年明けに発表したT-Mobile加入者限定の施策のことで、「AT&Tに乗り換えれば、既存契約の解約料と端末下取り代金とを合わせて最大450ドルを代わりに負担する」という内容。ファミリープラン(家族割り、のようなもの)を使って顧客の囲い込みを進めているAT&Tに対して、T-Mobileが他社の利用者に向けて家族全員の解約料を肩代わりするとの内容の新施策を打ち出してくるのでは……という可能性に対する、AT&T側の先制攻撃といった見方が有力だ。
・Temptation: AT&T offers T-Mobile users $450 to switch - CNET
ただし、AT&Tのこの動きに対しても、T-MobileのLegereは「顧客に賄賂を使うようなもの。でも顧客はそんな手に騙されたりはしないだろう」などと手厳しい。
・T-Mobile CEO: AT&T 'bribing customers, but they won't be fooled' - CNET
一方、AT&T側では今のところ「格下のT-Mobileが何をしようが、実際には大したことはない」と余裕の構えを維持している。ただし2013年12月には実質的にT-Mobileの動きを追従するような形の顧客を引きとどめる策も打ち出しており、内心はそれほど穏やかとはいえない状況かもしれない。