松岡功の一言もの申す

クラウド事業に対する富士通CFOの思惑

松岡功 2014年02月13日 19時00分

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富士通がパブリッククラウドに注力する理由

 クラウド事業を展開するIT企業の財務責任者は、ビジネスとしてクラウドをどう見ているのか。果たして業績に貢献しているのか。富士通を例に探ってみたい。

 「クラウド事業の売上高は、直近の四半期で前年度同期と比べて20%以上伸びている」

  • 決算会見に臨む富士通の加藤和彦CFO

 富士通のCFO(最高財務責任者)を務める執行役員専務の加藤和彦取締役は、同社が先ごろ開いた2013年度第3四半期(2013年10~12月)の業績発表の会見でこう語った。質疑応答の際、クラウド事業の業績への貢献について聞いた筆者の質問に答えたものだ。

 加藤氏はクラウド事業が好調な要因として、特にパブリッククラウドサービスの伸びが、ここにきて大きくなってきていることを挙げた。さらに同氏は、クラウド事業の業績についてこんな見方を示した。

 「今、われわれがクラウド事業の業績において直近の目標としているのは、月額利用料による月ごとの収入を早く100億円ベースに引き上げることだ」

 ちなみに、同氏が言う月ごとの収入については、1年前の前年度第3四半期で60億円ベースだったが、今年度第2四半期で70億円ベース、そして今回発表の同第3四半期で75億円ベースと着実に積み上がってきており、来年度にも目標の100億円ベースに到達する見通しがついてきた。

ストックビジネス化に期待

 直近の目標を語った加藤氏の次の発言が非常に興味深かった。「月あたり100億円ベースの収入を継続的に得られるようになれば、パブリッククラウドで安定したビジネスモデルを築ける。一方で、売り切りが主体のプライベートクラウドがあまり増加すると、自ら持ち出しになるケースも発生しかねず、次の商売がやりにくい状況になる。その点、月額利用料を着実に得られるパブリッククラウドならば、それをベースにさらに付加価値サービスを展開していけると、われわれは見ている」

 クラウド事業をストックビジネスとして捉えた、まさしく財務担当らしい見方だ。月あたり100億円ベースの収入が継続的に得られれば、年間で1200億円規模になる。加藤氏が、安定したビジネスモデルになると言うのは、この規模になれば利益もしっかりと確保していけるとの見立てがあるものと見て取れる。

SIが好調な間に広げたいストックビジネス

 プライベートクラウドに対する見方も臨場感がある。富士通はこれまでプライベートクラウドに注力してきたイメージが強いが「あまり増加すると、自ら持ち出しになるケースも発生しかねず、次の商売がやりにくい状況になる」という。実際にそういう問題が浮かび上がってきているとの印象を受けた。

 プライベートクラウドのビジネスモデルは、基本的に従来のシステムインテグレーション(SI)と同じ売り切りなので、財務担当としてはストックビジネスで安定的な収益確保につながるパブリッククラウドサービスの拡大に期待したいところだろう。

 ただ、逆にパブリッククラウドサービスは初期費用が発生しないので、売り切りのように一時的にまとまった売り上げが立たない。その点も財務担当が頭を悩ませるところではないかと思われるが、富士通の業績状況を見ると、ITサービス事業全体が前年度比二桁増で伸びており、先行きの指標となるSIの受注も同二桁増で推移していることから、要するに、従来の事業が好調な間にパブリッククラウドサービスによるストックビジネスを広げていこうという思惑があるようだ。

 とはいえ、パブリッククラウドサービスはグローバルでのビジネスボリュームがものを言う厳しい市場だ。決して盤石なストックビジネスではない。これまでのアウトソーシングサービスにはない流動性があるのは明らかだ。財務担当としても、今後はそうした状況を一層センシティブにとらえていく必要がありそうだ。

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