大元隆志のワークシフト論

営業担当をつける余裕はない--クラウド事業者のさえたやり方(後編) - (page 2)

大元隆志(ITビジネスアナリスト)

2014-04-16 07:30

社外活動の「余力」が、会社を強くする

 イベントでリード獲得し、解約防止とエコシステム拡大のために勉強会を実施する――。今回NTTコミュニケーションズを取り上げたのだが、実はこういった施策は、AmazonやMicrosoft、IIJ、さくらインターネットと、クラウドで先行する企業では名称は異なるものの、同様の取り組みがある。先行企業での取り組みが広がっていることからも、クラウド拡販に効果があると認識されてきていると推測できる。

 ただ、予算をかけてオフィシャルに取り組むイベントとは異なり、勉強会は社員の自主的な活動と位置づけている企業が多い。勉強会の活動について、会社としては残業代は出せないが、会議室などの利用を認めるといった措置をとっている。

 ここで、ある事実に気付く。強い者がより強くなる状況が発生していることだ。全社員が深夜まで残業するようなスタートアップや、会議室を持っていない小規模な企業では、同様の取り組みは、会議室を借りる費用などが必要なため、ハードルが高くなるということだ。社員数が多く大きなオフィスを構えている企業の方が同様の取り組みは容易だ。既にある資産の「空き」を使うだけだからだ。

 余裕のある企業はさらにサポートや顧客接点を充実させることが可能で、それができない企業との差を広げていく。また、林氏とのインタビューで「先手を打つ」活動は業績として評価しづらいとのコメントがあった。ここにも、これからの企業活動の差別化要素があるのではないかと感じた。

 新しい技術が登場し、自社として事業化可能かどうかを見極めるには時間が必要だ。事業化できない分野の活動は企業の業績として評価できないのは当然のこと。しかし、「先手を打った」企業がメディア露出に成功し、先行者利益を獲得するのはインターネットを舞台とするビジネスでは、ヤフーやGoogleの例からも分かるように常套手段となっている。理屈では分かっていても、それを企業として実践できるかどうかは、企業文化にも大きく依存するため、簡単にはできない。

 Gartnerが新技術が社会に受け入れられるまでの時間経過を示した「ハイプサイクル」という図がある。一般的に、技術の黎明期、過渡の期待のピーク時などの段階では、リスクを取ることを嫌う企業は行動に移せないことが大半だ。特に日本では市場に受け入れられ、顧客基盤の存在や先行企業の成功事例が出てきてから事業化に乗り出す企業が多い。しかし、これではリスクは少ないが、コモディティ化しているため競争も激しく、得られるリターンも少ないという課題がある。


先手を打つために社員の社外活動を活用する

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