
IBMが「System/360」(S/360)というメインフレームを発表してから50年が経過した。このS/360は近代的コンピューティングの祖父として敬意を払われている。同システムではルックアヘッド方式のパイプラインや、分岐予測、マルチタスク、メモリ保護、汎用割り込みといった現在では一般的となっている処理技術が採用されていた。S/360は、今日の半導体チップ内で採用されている、アーキテクチャ上のトリックとでも言うべき技術の数々が人類の月面着陸前から存在していたのだということを思い起こさせてくれるシステムなのだ。
しかし、S/360が簡単にアップグレードできる汎用目的コンピュータという、現代では当たり前となっているコンピュータを実現したことの方が重要と言えるだろう。
S/360以前のコンピュータは、世代の異なるハードウェアの混在が許されなかったため、アップグレードという選択肢はなく、総入れ替えとなるのが普通だった。新しいシステムはたいていの場合、従来のシステムと互換性がなく、各マシンはカスタムメイドのOSや周辺機器、ソフトウェアに依存していた。また、メインフレームは科学技術計算や商用目的といった、特定のタスク向けに設計されるのが常であった。
S/360ファミリのハードウェアはアップグレードが可能であり、ソフトウェアやOS、周辺機器も共有でき、幅広い目的に使用できるようになっていた。これによって、企業や各種業界、科学分野でのメインフレームの採用が進むことになった。
提供:IBM