デジタルバリューシフト

デジタル化が企業価値を変える--バリューシフトの時代

千葉友範(デロイト トーマツ コンサルティング) 林 大介(デロイト トーマツ コンサルティング)

2014-09-04 07:00

 モバイルやクラウド、M2M(Machine to Machine)、そしてIoT(Internet of Things)。このような「デジタルテクノロジ」はあらゆる産業の中でも突出した異様なスピードで進化し続けていることに異論を挟む余地はないだろう。iPhoneが世に送り出されてまだ10年も経っていないのである。

 この連載では既存のITを進化させた先進的な技術の利用や、右脳的な感性での表現を必要とする技術について「デジタルテクノロジ」という表現で示す。デジタルテクノロジの進化は人々の生活やビジネスを大きく変え、これからも多くの変革をもたらすことは想像に難くない。こうしたデジタルテクノロジの台頭、活用により企業を取り巻く環境は劇的に変化し、企業はこれに常に対応していかなければならない。

 連載では、エンタープライズの世界において、昨今注目を集めているデジタルテクノロジを活用し、企業をいかに変革していくのかをテーマに検討を進めていく。

デジタルテクノロジが変える企業

 かつて「バリューシフト」という書籍が出版され反響を呼んだ。2002年のエンロン事件に端を発し、日本では2004年に出版されたこの書籍だが、企業評価に関する「価値観」が大きく変動しているという視点に立脚しており、企業での「倫理」の重要性を説いた名著である。

 この頃からCSR(企業の社会的責任)という言葉が広く知られるようになり、多くの企業がその対策を講じてきた。そしてこの書籍の冒頭には「倫理は得になるか」という本質的な問いがあるのだが、このフレーズに近い言葉を、読者諸氏も日常的に耳にしていないだろうか。

 「そのシステム、入れたらいくら儲かるの」という経営者の声である。

 企業が営利を目的にした団体である以上、どんな行動も経済的な意味を持つ必要がある。デジタルテクノロジの導入も例外ではない。既述に倣って言うならば「デジタルは得になるか」の問いに答えなくてはならない。そして多くの人が肌では「デジタルは得になる」と感じるものの、その証明に骨が折る読者も少なくないと思う。

 近年の成長企業や目を見張るビジネスモデルのベンチャー企業を見てみると、その中枢には強いコアコンピタンス(自社ならではの企業の中核的な優位性)を確立するためのテクノロジが存在する。ハイヤー配車のUberや、鮮魚流通の八面六臂などが好例である。

 これらの企業はデジタルテクノロジを駆使して世の中に新たな価値を生み出したが、言い換えればデジタルテクノロジがその企業の「価値」そのものを形作っていると言えるだろう。新興のベンチャー企業に限らずどんな企業でも、デジタルテクノロジを用いてその企業価値を変えていく余地は存分に残されている。「ワークスタイル変革」は、まさにその象徴ではないだろうか。

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