「シカゴの人々にとって、すべてはデータから始まる。(Rahm)Emanuel市長にとっては、すべてがデータへと戻ってくる」。こう語るのは、シカゴ市の最高情報責任者(CIO)であるBrenna Berman氏だ。
Berman氏は米国時間10月15日にシカゴで開催されたInternet of Things World Forumで講演し、オープンデータが、スマートシティを目指すシカゴのあらゆる取り組みの基礎であると述べた。シカゴ市のウェブサイトでは、人間(と機械)が読める形式のデータセットが600以上公開されており、その内容は、2001年から前週までに報告されたシカゴ市のすべての犯罪記録から、水質データ、311(行政総合窓口)通話のデータ、免許関連のデータ、許可証関連のデータなど、多岐にわたる。
そこから、シカゴ市やの研究者などは、さらに多くのデータを収集するプロジェクトを進めるために、そうしたデータを利用し始めた。シカゴ市が利用する「WindyGrid」というプラットフォームでは、14のデータソースが1つの地図上に表示されるほか、緊急通報、311の通話、ツイートなどのデータが保存され、市内で起きていることがわかるようになっている。
「これを状況認識のために、つまり何が起こっているかを理解するために使うことができる。現在起きていることを理解するための研究に利用できるということだ」。シカゴ市の最高データ責任者(CDO)のTom Schenk氏はこのように述べた。
「当初は透明性のためだったが、他の人々がわれわれのデータを別の状況でどう使うのか、見ていくのが興味深くなってきた」(Schenk氏)
Schenk氏は、そのデータを使用している開発者を20以上知っているが、データへのアクセスに登録が必要ないため、実際にはもっと多い可能性もあるという。
シカゴ市がこれまでにWindyGridプロジェクトに投じた予算は10万ドル未満で、このオープンデータプロジェクトの運営費用は年間5万ドル未満だ。
「費用がかからないオープンソーステクノロジの利用を重視している」(Schenk氏)
シカゴ市はまた、31種類のソースからデータを取り入れるプログラムも開発した。例えば、ゴミ箱があふれている場所や、天気のパターン、空きビルの場所といったデータを使って、ネズミの巣が発生する場所を予測し、住民が通報してくる1週間前に、2台のトラックを派遣してネズミ駆除用の餌を散布することができる。
ネズミの発生予想図
提供:シカゴ市
「当市のデータサイエンティストはこれを見て、場所と時間の相関を取る。現在このようにして生成されているのが、市民から7日以内に苦情が来ると考えられる場所のリストだ。このリストは毎日更新されている」(Schenk氏)
Berman氏によると、最近完了したネズミ駆除のテストでは、ネズミの巣の位置を予測することで達成された効率化によって、20%の費用節減が実現したという。
「これを使うことで、もっと先を見越した形で市のサービスを提供できるようになる」(Berman氏)
同市はバスに搭載したGPSを使って、バスの到着時刻に関する情報を提供するだけでなく、市全域の交通渋滞を推定している。市内の自転車シェアリング用のラックは、利用可能な自転車がある場所のデータを随時提供している。
Schenk氏によれば、こうしたデータによって、シカゴ市は都市機能を強化しスマートシティの実現に向かって前進することが可能になったという。