ドローン普及に向けて政府が支援する動きも出てきている。アラブ首長国連邦では政府主催の民間企業向けのドローンを使ったアプリケーションコンテスト「The UAE Drones for Good Award」が開催されている。コンテストは国際部門で100万ドル、地域部門で27万5000ドルと破格の賞金が用意されており、決勝は2014年12月15日~2015年1月15日に開催される。
そして、世界のドローン工場として中国が存在感を高めている。中国の深圳に本社を置く従業員2000人を超えるDJIは、ドローン市場で軍事用を除いて世界シェアの7割を占め、2014年の売上高は前年比3倍を超える25億元(約450億円)以上を見込んでいるという。
DJIの人気製品「Phantom 2」
日本においては、10月にドローンの産業振興を目指すコンソーシアム「一般社団法人日本UAS産業振興協議会」が発足した。東京大学、産業技術総合研究所、リコー、ヤフー、ブルーイノベーション、東京航空計器、国土交通省、経済産業省、JAXAなどが参加する。産学官の取組みが、日本におけるドローン普及のための起爆剤となることが期待される。
世界各地では、ドローンビジネスの本格的な離陸を視野に入れて、さまざまな取り組みが進められている。ドローンの普及において重要になるのは、ドローン向けOSを中心としたエコシステムだ。ドローン向けOSというオープンなプラットフォームを通じて、さまざまな企業が参入し、配送や農業や災害対応などの分野でアプリケーションが開発されサービスが提供されることで、多くのビジネスチャンスが生まれてくるだろう。
ドローンの普及には課題も山積
一方で、ドローンの普及には、問題も山積している。空撮によるプライバシーの問題、住宅地や商業地などの人口過密地帯での墜落事故による被害のリスクが指摘されている。
3月に米国フロリダ州でドローンとアメリカン航空の旅客機とのニアミスが発生、5月には英国エセックス州の高度約460mの上空で旅客機とのニアミスも発生したように、ドローンによる旅客機の安全な飛行への影響が懸念されている。
ドローンの飛行を安全に管理するために、米航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration:NASA)では、専用航空管制システムの開発も進められている。
商用利用でドローンの普及が進めば、上空での交通渋滞を引き起こし、事故が発生する頻度も増えていくだろう。ドローンのビジネス展開にあたって、空域の奪い合いも発生する可能性もあり、規制改革や利用ルールの整備が急がれている。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。