富士通、高度医療研究機関と共同研究へ--がんや循環器疾患、認知症が対象

大河原克行 2014年12月24日 18時27分

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 富士通は12月24日、健康寿命社会の実現に向けて独立行政法人の国立がん研究センターや国立循環器病研究センター、国立長寿医療研究センター、そして国立大学法人の東京医科歯科大学と共同研究に関する協定を締結したと発表した。2015年3月をめどに各機関との研究内容を具体化し、共同研究を開始する。

 富士通では、2013年12月に社長直轄の組織として未来医療開発センターを設立して、国民の健康寿命延伸に向けて高度医療研究機関と共同で国民の健康増進、重症化予防、疾患の早期発見、新薬創出、個別化医療などでのICT利活用の実現を検討してきた。

 未来医療開発センターの設立から1年を経て、高度医療研究機関との共同研究を本格化。それぞれの高度医療研究機関でがんや循環器疾患、認知症などの克服を目的に研究する。東京医科歯科大学とは、疾患の重症化予防の鍵となる医療分野のデータ解析手法を開発する。

 具体的には、国立がん研究センターでは、がんのメディカル・ゲノムセンター機能に必要なゲノム情報と診療情報を統合、国立循環器病研究センターでは、循環器疾患の克服や抑制に向けて食事や運動、睡眠、口腔ケアなどの生活習慣のデータを解析し、行動変容を促す新たな介入方法や効果判定法を開発。国立長寿医療研究センターでは、認知症の早期発見システムの構築など、対象者の医学的情報と日常生活情報を蓄積し、そのデータから認知症の予兆を予測するための技術を確立する。

堀田知光氏
国立がん研究センター 理事長 堀田知光氏
橋本信夫氏
国立循環器病研究センター 理事長 橋本信夫氏
鳥羽研二氏
国立長寿医療研究センター 理事長 鳥羽研二氏
田中博氏
東京医科歯科大学 難治疾患研究所 生命情報学教授 田中博氏
山本正已氏
富士通 代表取締役社長 山本正已氏
合田博文氏
富士通 特命顧問 未来医療開発センター長 合田博文氏

 国立がん研究センター理事長の堀田知光氏は、「がん組織のゲノム解析に基づく個別化治療に対応するために、個々の症例のがん組織の体系的な分子標的の検索、同定された標的に対応する分子標的薬の臨床試験を行う。5%といわれる遺伝性のものに加えて、病変部位のがん組織を対象にした“クリニカルシークエンシング(臨床ゲノム解析)”などに取り組む。その結果として、ゲノム医療の実施体制拠点の整備につなげ、政策提言にもつなげたい」とコメントした。

 国立循環器病研究センター理事長の橋本信夫氏は、「脳卒中や心臓疾患などの循環器疾患は医療費の20%を占めている。また、塩分の接種を2g減らせば年間2万人の脳卒中死亡者を減らせる。こうしたデータだけでなく、ビッグデータから生活の変容を捉えて、予防医療につなげたいと考えている。これまで考えられなかった相関関係が見つかるかもしれない」などとした。

 国立長寿医療研究センター理事長の鳥羽研二氏は「認知症の予防やケアがますます重視されている。認知症発症予防については、防御因子を増やし、促進因子を減らすといったことが重要である。今回の取り組みは、データを活用して早期発見に加えて、認知症予防や進展予防につなげることができるかどうかの新たな取り組みになる」と語った。

 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 生命情報学教授の田中博氏は「ゲノム情報、遺伝的知識、臨床知識を組み合わせることで超早期診断での先制医療、疾病した場合の個別化医療による再生医療、重症化予防による健康寿命の長期化などが実現できる。今回の富士通との協力で個別化医療に向けたデータの蓄積と分析を行うことで、新たな医療へ取り組みを加速できると考えている」とした。

200人規模に拡大

 富士通代表取締役社長の山本正已氏は、「富士通が取り組んでいるソーシャルイノベーションは、グローバルに展開することで持続的な成長も期待できる。中でも医療分野はICTによる革新が大きく期待できる分野。だが、ヘルスケアを例に挙げれば、精度の高い情報収集、高い分析力、高度なセキュリティが求められる」と現在の状況を解説した。

 「富士通は、スーパーコンピュータに代表されるトップレベルの実力を持ち、イノベーションに必要となる要素を自社で持っている。電子カルテなどのミッションクリティカルシステムでも要求に応えられる技術を持ち、これらのノウハウを活用することで、健康寿命社会の実現に向けたICT基盤の提供を目指している。それを実現するためには研究機関や医療機関との連携が必要である。今回の協定締結で研究活動を加速し、未来医療の実現に取り組む」(山本氏)

 富士通 特命顧問 未来医療開発センター長の合田博文氏は、「富士通は1970年代から医療分野でのICT化に取り組んでおり、電子カルテではトップシェアを持つ。健康寿命社会の実現に向けては、すでに文部科学省のCenter of Innovation事業で東京大学と自由記載テキストを含む臨床データ抽出、臨床ゲノム統合データベースの構築に取り組んでいるほか、慶応義塾大学とは最先端臨床医学知識ベースの構築、北里大学とは漢方診断支援ロジックの解析などに取り組んできた。スーパーコンピュータを活用することで、生体シミュレーションや新規医薬品の開発などにも寄与している」と同社のこれまでを解説した。

 「今回の協定締結は、国を代表する機関とともに、今後どんなデータが研究や臨床に役に立つのかを精査しながら、データ収集基盤を強固にしていくことが狙いとなる。さらにこれらのデータの活用基盤として、ヒューマンブリッジという情報連携機能をベースにし、ICTを最大化した個別化医療の実現や、重症化予防の研究、リスクの早期発見などに取り組む」

 合田氏はまた「今回の投資は、未来医療開発センターに対する300億円の投資の中で進めているものである。未来医療開発センターは、二十数人でスタートしたが、今後、200人規模に拡大することになる」と述べた。

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