社内のエンジニアがテストを行うと、人月が60万円以上になります。それに対してわれわれは35万円。ほぼ半額なので依頼する側はコストを下げられます。
SHIFTの創業メンバーはモノ作りの現場で生産管理や品質管理をしていた人間で構成されています。徹底的に分業化して生産性を上げて品質管理をするというDNAを持った人間からみたとき、(ソフトウェアテストの方法論が確立していない)ITは非常に変わった業界でした。異業種が交流するとイノベーションが生まれるという典型です。私はIT業界出身ではないですが、ITは圧倒的に効率化できるということがわかって、そこに今イノベーションがやっと生まれつつあるという感じですね。
--差別化のポイントはどこか。
SHIFTの特徴は4つあります。ひとつは「CAT検定」という検定試験です。この検定試験がSHIFTに入るための採用試験のようなもので、年間5000人が受験し、その合格率が6%程度、年間で300人が合格します。そのうち面接を通過した200人を採用しています。開発とテストでは必要とされる能力が違います。テストに向いている人材なので、他社でテストをしているエンジニアよりも生産性が3倍くらい違うという認識があります。
2つめが「CAT」というツールです。これはComputer Aided Testの略で、CADをもじったものです。テストも生産性が重要であり、その管理がチャートされて、どういうテストをやったらいいかがすべてメンバーに配布されます。メンバーは、作業すればするほど給料を稼げる仕組みになっています。500人のテストエンジニアがいますが、バックエンドは1人か2人しかいません。その給料計算もCATを使っていまして、ローコストオペレーションの徹底した生産管理体制が確立しています。
3つめは、テストにおいて独自の方法論を確立していることです。実際のテストは、たとえばログイン画面でIDとパスワードを入力してボタンを押すと画面が遷移します。これを品質保証しようとすると結構大変です。なぜかというと、ID、パスワードは大文字小文字、特殊文字などバリエーションがありますし、正規の会員と非正規の会員で遷移が変わることもあります。ECサイトであればポイントやクレジットカードの有効期限なども参照することになります。さらにブラウザの種類やバージョンもあります。
すべてを網羅的に組み合わせを考えて、どのパターンでも全部動くことが品質保証です。組み合わせを作っていくので、テストではプログラムの知識は必要ないんですね。数学の順列や組み合わせ、場合分けのような能力が必要になります。そういうロジックを作れる方法論が必要で、その方法論もわれわれが独自に作ったものです。
4つめは、いろいろな業界の不具合のデータがナレッジとして蓄積していることです。例えばiPhone 6で出やすい不具合、JavaとCentOSの組み合わせで出やすい不具合など、“このようなコーディングをすると、この種の不具合が出る”というデータです。それが現時点で20万件ほど貯まっており、上流でこうした情報を確認しておくことで、テストでの不具合を劇的に減らすことができます。
テストは後工程であり、ここで不具合が出てしまうと修正に10倍ほどのコストがかかってしまいます。2000万円かけてテストするより、200万円でさまざまな情報を見て開発手法を整備をしておけば、2000万円のテストコストがいらなくなります。テストをやればやるほどデータが溜まっていく点もSHIFTの差別化になっています。