Equinixが事業の大きな強みとしているのが、「Equnix Cloud Exchange」と呼ぶ複数のクラウドサービスやネットワークなどを相互に結びつけて提供するサービスだ。ビットアイルも同様の「ビットアイルコネクト」を提供しており、Equinixと同様のアプローチをしているところもあり、今回買収につながったきっかけの一つになったのではないかと推測される。
Equinixと同様のようにデータセンター間やデータセンターとクラウドサービス間のネットワークが、新たなビジネス機会を創出しており、一つの付加価値サービスにもなっている。NTTコミュニケーションズが8月に発表した「Multi-Cloud Connect」にように、大手事業者も対応を進めている。
世界のデータセンター市場でEquinixを追いかけるのが、サンフランシスコに本社を置くDigital Realty Trustだ。ホールセールが中心に設計をしており、世界100拠点以上に事業を拡大している。 海外では、そのほか、英Global Switch、米国のQTSやLevelなどがあげられる。 日本国内の事業者では、NTTコミュニケーションズのNexcenter、KDDIのTELEHOUSEなどがあげられる。
NTTコミュニケーションズやKDDIなどの通信事業者は、通信事業者の強みを生かし、データセンターとネットワーク、さらにはクラウドなどをワンストップで提供し、積極的に海外のデータセンター事業への投資を実施している。
NTTコミュニケーションズは、2014年2月に米国データセンター事業者 RagingWireを買収、2015年6月にドイツ最大のデータセンター事業者であるe-shelterを買収、この7月にインドネシアのデータセンター事業者PT.Cyber CSFを買収といったように、買収を加速している。
データセンターを中心とした事業者連携も加速している。Facebookなどが中心となって発足した「Open Compute Project(OCP)」は、データセンターで使用しているラック「Open Rack」や、Open Rack用のサーバやマザーボードや電源、筐体、データセンターの設計に関する仕様をオープンソースとして公開し、ベストプラクティスを業界全体で共有するためのプロジェクトだ。
OpenPOWER Foundationは、2013年8月にIBMやGoogle、NVIDIAなどが中心となって設立した団体だ。IBMのPOWERのアーキテクチャがベースで、サーバや関連システムの開発が効率的になるような規格の策定やオープン化の取り組みを進めている。
クラウドサービスの市場拡大に伴い、データセンターは国内においては当面成長基調にある。しかしながら、少子高齢化による高齢化による国内市場の縮小、データセンターの老朽化が進み、さらにはデータセンターの建設過多に伴う供給過多も懸念されている。さらに、今回のビットアイルの買収などにあるように、業界再編がさらに加速する可能性は高い。
国内のデータセンター事業者が生き残りをかけていくためには、舵取りは非常に難しいが、海外へのデータセンターの事業展開が重要な選択肢の一つとなっていくだろう。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。