オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」は、競合するAmazon Web Services(AWS)のクラウド事業を市場規模で上回る存在になり得るか。OpenStack陣営のキーパーソンが、この点について言及した。
AWSの対応勢力として存在感を高めるOpenStack
10月27日から4日間、都内ホテルで開催されているOpenStackの国際カンファレンス「OpenStack Summit Tokyo 2015」において、OpenStack FoundationのMark Collier最高執行責任者(COO)やJonathan Bryceエグゼクティブディレクターらが初日に記者会見を行い、AWSとの競合関係について言及した。

「OpenStack Summit Tokyo 2015」での記者会見の様子。中央がOpenStack FoundationのMark CollierCOO、左がJonathan Bryceエグゼクティブディレクター
Collier氏はAWSについて、「クラウド市場で非常に大きな存在であることは疑いようがない」とした上で、「私たちはOpenStackが生み出している市場の規模を把握していないので一概に比較できないが、競合するパブリッククラウド市場において、グローバルでのプレゼンスはAWSよりもOpenStackのほうが上回っていると考えている」と語った。
また、「OpenStackはすでにプライベートクラウドのプラットフォームとして多くの企業に利用されており、この分野ではオープンなスタンダードになりつつある。一方、パブリッククラウドに向けても複数のプロバイダーがOpenStackをベースとしたサービスを展開しており、着実に実績を上げている。AWSを過小評価するつもりはないが、OpenStackは対抗勢力として存在感を高めつつあると実感している」とも話した。
- TechRepublic Japan関連記事
- OpenStack:IaaS環境構築の大本命--オープンソースのクラウド構築基盤
- 小さな組織はOpenStackを使うべきか--導入時の難所とは
Bryce氏はAWSとの関係について、「OpenStackは今後もパブリッククラウド市場においてAWSと競合するだろうが、一方でユーザーの要望として、AWSのパブリッククラウドとOpenStackをベースとしたプライベートクラウドを連携させて利用したいというニーズが今後増加してくるのではないか。OpenStackは今後、そうしたハイブリッド利用へのニーズに対応した技術の深みも出てくると考えている」との見解を示した。
コスト競争力やスピーディな技術革新力が決め手に
パブリッククラウドは「クラウドサービス」、プライベートクラウドは「クラウドというシステムの構築」という見方をすると、OpenStackベースのクラウドサービスにおいてAWSにグローバル市場で対抗する勢力がまだ乏しいというのが、OpenStack陣営の最大の課題ではないかと筆者は見ている。
OpenStackをベースとしたクラウド事業を推進するHPが、パブリッククラウドから撤退することを発表したのは、OpenStack陣営のそうした課題を浮き彫りにした動きとも見て取れる。
ただ、プライベートクラウドでも「ホスティング型」が個別の企業に対応したクラウドサービスとして浸透しつつあり、その分野でOpenStackの存在感が高まってきているようにも感じられる。とはいえ、AWSもこの種のサービスに力を入れており、結局はパブリッククラウドで鎬を削っているコスト競争力やスピーディな技術革新力が、ユーザーから見てサービスを選択する決め手になる可能性が高い。
果たして、OpenStackはAWSを追撃できるか。筆者はOpenStackのイベントを初期の頃から取材してきたが、今回はその盛り上がりぶりに改めてOpenStackへの期待の大きさをひしひしと感じた。OpenStackをベースとしたクラウドの有力プロバイダーでもある大手システムベンダーの技術部門を統括する幹部がこう話していた。
「OpenStackがAWSを追撃できるかどうかは分からないが、かつてのサーバOS市場に例えれば、OpenStackはLinuxに匹敵する存在にはなるのではないか」
そういえば、ここ数年のOpenStackのイベントの拡大ぶりや雰囲気は、Linuxが登場した頃によく似ている。OpenStackがクラウド市場でどのような存在になっていくか。それはクラウドのありようそのものを映すことにもなりそうだ。