「ウェアラブル端末」については、「追跡される個人情報の量は比較的少ないものの、ウェアラブル端末を介して、それを管理するスマートフォンに攻撃を加えようとするサイバー犯罪者の標的になる可能性がある」としている。
最後に「クラウドサービスの悪用」については、「サイバー犯罪者は、クラウドサービスを保護するために策定した企業のセキュリティポリシーの弱点や軽視されているものを悪用する可能性がある」としている。
とりわけ2016年はマイナンバー(社会保障と税の共通番号)制度が実施されることもあり、これまでにも増して個人情報の扱いには注目が集まる。その意味では「闇市場」のような存在を強く意識し、不測の事態に備えておく必要があるだろう。
「紙資源から新しい価値を生み出す“スマートサイクル事業”を推進したい」 (セイコーエプソン 碓井稔 代表取締役社長)

セイコーエプソン 代表取締役社長 碓井稔氏
セイコーエプソンが先ごろ、オフィスなどで使用した書類から新しい再生紙を作ることができる装置「PaperLab」を開発したと発表した。碓井氏の冒頭の発言は、その発表会見で、これを機に新事業を推進する意気込みを示したものである。
PaperLabは、使用済みの紙を原料として、水を使わずに文書情報を完全に抹消したうえで新しい紙を生産できるもので「オフィス製紙機」と銘打っている。水を使わずに再生紙を作る技術は世界初という。商品化は2016年内の予定だ。
PaperLabを導入することによって、紙のリサイクルをオフィスで完結でき、文書を紙繊維にまで分解するため、情報を完全に抹消することができる。また、PaperLabに使用済みの紙を入れて再生開始ボタンを押せば、約3分で1枚の新しい紙ができ上がる。A4用紙の生産能力としては、1分間に約14枚、1日8時間稼働させれば6720枚の紙を再生可能。紙厚の異なるA4・A3サイズのオフィス用紙や名刺用紙、色や香り付きの紙なども生産できるという。
碓井氏は会見で、「当社の技術は、省エネルギー、小型化、高精度の商品性能を実現する“省・小・精の技術”を基盤としている。また、これまで幅広い分野でプリンタ事業を展開してきた当社にはインクやメディアに関する膨大なノウハウがあり、安定して稼働する信頼性や耐久性などに優れた機器を作り上げることも可能だ。これらの技術を結集し発展させることでPaperLabを実現した」と説明。そのうえで、「これまでの紙は使って終わりという流れを変え、紙資源から新しい価値を生み出す“スマートサイクル事業”を推進したい」と力を込めて語った。
さらに、「スマートサイクル事業の将来像としては、PaperLabをプリンタのように容易に設置できるように小型化などを一段と進める。これにより、当社のインクジェットプリンタで印刷し、その紙を使い終わったらPaperLabでまた新しい紙にするという、これまでにない循環型の新しいオフィスを創出していきたい」と、エプソンの製品で完結するスマートサイクル事業の姿を示した。
画期的な発表だが、気になるのはコストだ。価格やビジネスモデルについては、正式な商品発表時に明らかにするという。ただ、碓井氏は「当然、経済的にメリットがある形で提供できるという目処が立ったので、今回開発段階で発表した」と自信ありげに語った。果たして新たなオフィス革命を起こすことができるか。大いに注目しておきたい。

オフィス製紙機「PaperLab」