FinTechの今 グローバルから見た日本

村上隆文(アクセンチュア戦略コンサルティング本部)

2016-01-01 00:00

はじめに

 昨今、「FinTech(フィンテック=金融とテクノロジの融合)」というキーワードを目にする機会が増えている。2015年は、メガバンクグループでFintech専門組織の新設が相次いだほか、金融庁がFinTechの普及を見越して新たな法整備に乗り出すといった報道も見られた。また、経済産業省では産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech 研究会)が立ち上がったことなども記憶に新しい。

 このように情報の発信源は、FinTechを生業とするスタートアップ企業にとどまらず、金融機関、ベンチャーファンド、行政機関など、さまざまなプレーヤーが「FinTech」について語り始めている(図表1)。

図表1:FinTechに関する記事件数の推移※2015年12月アクセンチュア調べ。
図表1:FinTechに関する記事件数の推移※2015年12月アクセンチュア調べ。

 このようなFinTechに関する記事件数の推移や状況などからしても、2015年は「FinTech」というキーワードが専門家に閉じた言葉から金融およびIT業界、さらにはその他の業界を含む多くのビジネスパーソンにも認知される言葉となった転換期といっても過言ではないだろう。

 一方で、言葉の具体的な意味を問われると、「漠然としていて、つかみどころがない」「単なるバズワードではないか」と思われている読者も多いのではないだろうか。

 本連載では、FinTechを「金融イノベーション」の切り口から複数回にわたり考察し、FinTechが金融市場において果たすであろう役割や影響、また各プレーヤーが意識すべき事柄について紹介したい。本連載を通じて、日本におけるFinTechに対する多面的な理解が進み、結果として金融イノベーションの促進の一助となれれば幸いである。

グローバルにみるFinTech市場の加速度的な拡大

 さて、日本における「FinTech」の盛り上がりは、局地的な動きであろうか?答えは明確に“否”である。グローバルのFinTech市場の動向から、日本の現状を理解することからはじめよう。

 アクセンチュアが、調査会社CB Insightsのフィンテック投資データを基に分析したグローバルのFinTech投資動向の調査(図表2)によると、2014年のグローバル全体でのFinTech投資額は122億1400万ドルであった。

 これは、2013年の40億5200万ドルと比べて実に3倍の金額である。実のところ2013年までは、2008年の11億4100万ドルから5年間で約3倍に投資額が伸びていることをもって、FinTechがグローバルで着実に勢いづいてきたことの証左としてきた経過がある。2014年は単年度でそれを大きく超過する、まさに加速度的な伸びとなっている。

図表2:グローバルのFinTech投資動向。出典:アクセンチュア(2015)「The Future of Fintech and Banking : Digitally disrupted or reimagined?」
図表2:グローバルのFinTech投資動向。出典:アクセンチュア(2015)「The Future of Fintech and Banking : Digitally disrupted or reimagined?」

図表3:グローバルの地域別FinTech市場規模(2014年)。
出典:アクセンチュアによるCB Insightsデータの分析

 そして、グローバルのFinTech市場規模を地域別に見ると(図表3)、米国が全体の8割を占め、続いて英国を中心としたヨーロッパが大きな割合を占めている。その一方で、2014年の日本におけるFinTech投資は5400万ドルに過ぎず、全体に占める割合はわずか0.4%にとどまっている。

 世界的に非常に少ない割合ではあるが、逆の見方をすれば、日本の経済規模や金融IT市場規模から見ても、大きなポテンシャルを持っている市場と言える。

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