富士通マーケティング社長が説く「企業発展の条件」 - (page 2)

松岡功

2016-02-26 12:00

 3つ目は「ICTソリューションへの関心」。調査結果では「情報セキュリティ」「事業継続」「モバイルソリューション」が上位3つとなった。同氏によると、これらの順位は2014年度と変わらないが、「SaaS展開」が15位から10位へと浮上し、クラウドサービスへの関心が高まりつつあると語った。

 これらの調査結果を踏まえ、同氏は「事業継続」を中心に「セキュリティ対策」「災害対策」「制度・法令への対応」「人材育成」の5つが、ICTに対する時代の要請におけるキーワードだと説明した。

 そしてスピーチの最後に生貝氏は、「企業の発展には安定した事業基盤の構築・維持が欠かせないが、その一方で市場環境の変化に対応するため、一歩先を見据えてIoT(Internet of Things)やビッグデータ、AI(人工知能)などの新しいICT活用に取り組むことが重要になってくる」と呼びかけた。

 冒頭の発言は、このメッセージのエッセンスである。とりわけ「一歩先を見据えて」と強調していたのが印象的だった。

「優れた顧客体験が企業の競争力を強化する」
(アドビシステムズ 佐分利ユージン 代表取締役社長)

アドビシステムズの佐分利ユージン 代表取締役社長
アドビシステムズの佐分利ユージン 代表取締役社長

 アドビシステムズが先ごろ、今後の事業戦略について記者会見を開いた。佐分利氏の冒頭の発言はその会見で、同社の事業における基本的な考え方について述べたものである。

 同社の親会社である米Adobe Systemsは、2012年にソフトウェア事業からクラウドサービス事業へと大転換を図り、現在ではクリエイティブなデザインやコンテンツ制作に向けた「Creative Cloud」、デジタルマーケティングを推進する「Marketing Cloud」、ドキュメント業務を効率化する「Document Cloud」といった3つのクラウドサービスを手掛けている。

 佐分利氏によると、2015年度(2014年11月29日~2015年11月27日)のグローバルでの売上高は前年度比16%増の48億ドルと過去最高を記録。クラウドサービス事業が既にそのうちの約7割に達しているという。

 日本法人における2016年度の事業戦略について同氏は、「Creative Cloudについてはエンタープライズ向けなど新規ユーザーの獲得、Marketing Cloudについては各業界のニーズに対応したソリューション提案やパートナーエコシステムの拡大、Document Cloudについては1年前にサービスを始めたことから一層の認知度向上に努めていきたい」と語った。

 会見の中で筆者が最も興味深かったのは、「顧客体験」に強いこだわりを持つ同社の事業における基本的な考え方だ。その発端は佐分利氏の次の発言である。

 「今後、企業が継続的に成長していくためには、デジタルを中核としたビジネス戦略を展開していく必要がある。そのキーワードとしてクラウドやIoT(Internet of Things)、AI(人工知能)などが注目されているが、そうした技術はあくまで手段であり、企業の競争力を強化していくために最も決め手となるのは優れた顧客体験にあるとわれわれは確信している」

 冒頭の発言はこのコメントのエッセンスである。では「優れた顧客体験」とは具体的に何なのか。佐分利氏は次の4つの要素があるという。

 1つ目は「魅力的なコンテンツ」。顧客の興味をとらえ、惹きつけて放さないコンテンツであることが重要だ。2つ目は「パーソナル」であること。優れた顧客体験を提供するには、個々の顧客のことを熟知する必要がある。3つ目は「利便性」。そして4つ目は「エブリウェア」。いつでもどこでも優れた顧客体験を提供できるようにしなければならない。

 その上で佐分利氏は、「この4つの要素を最適な形で組み合わせることにより、優れた顧客体験を提供していく。これがわれわれの最大の差別化戦略だ」と強調した。まさにアドビならではの戦略といえる。果たしてどんな優れた顧客体験を提供してくれるか。注目しておきたい。

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