一般的に普及を感じられる数値として、イノベーション普及学で言われるアーリーマジョリティからレイトマジョリティ(ここに浸透させるとサービスとしてはまず成功)に移る普及率50%とすることが多いが、導入率≒普及率と考えると、日本のクラウド導入率38.7%という数字は、「使いたい人が選択して使うサービス」という見方で問題ないだろう。
現在、「IT先進国」として認知されている日本ではあるが、新興国だけではなく、先進国との比較においても、クラウドサービスの導入率に差があることがわかった今、数年後には、「クラウド後進国」として、グローバル競争から取り残されているかもしれない。
すべてのビジネスがデジタルに
では、なぜ選択してクラウドを利用する必要があるのか。その答えの前に、いまあらゆる企業が置かれているビジネス環境の認識を共有しておきたい。
ここ数年、デジタルビジネスへの転換が大きな経営課題になっており、ソーシャルやモバイル、アナリティクス、クラウド、センサといった新しいテクノロジをいかに取り込み、デジタル化に必要な能力を身につけていくかが、多くの先進企業が取り組むテーマとなっている。Gartnerによると、日本企業のデジタルビジネスの準備状況として、実に回答者の70.7%(2015年7~8月の結果)が何らかの形で準備を進めているという。
デジタルビジネスへの対応が自社の収益性向上、成長、競合他社との差別化を実現するための重要な手段となっており、ITを活用し、高い収益を上げている企業では、いかにデジタル領域での魅力的なブランドエクスペリエンス(企業が生活者に提供するブランド体験)を顧客に提供できるかが、ビジネスの成功のカギとして認識されている。Gartnerによると、調査したビジネスリーダーの89%は、2016年までに、顧客体験が競争における主要な基盤になると考えているとしている。
(図2)代表的なデジタルビジネスの事例
図2は代表的なデジタルビジネスの事例である。FacebookやUberなどの最新テクノロジを巧みに利用して既存の市場を切り開く「デジタルディスラプター」と呼ばれる企業から既存の小売業や製造業、また行政においてもデジタル化の波は避けては通れないものとなってきている。