VMware新戦略--マルチクラウド制御を展開

怒賀新也 (編集部)

2016-05-20 16:44

 ヴイエムウェアは5月20日、都内で記者発表会を開催し、2016年度の日本での事業戦略を説明した。これまでサーバ仮想化の「vSphere」がけん引した成長を、今後はネットワーク仮想化の「NSX」やモビリティ管理の「AirWatch」が引き継ぐ形で、日本を含めて高い成長性を見込む。データセンター変革という従来の戦略を進め、各社のパブリッククラウドを含めたマルチクラウド環境を管理する制御プレーンを提供する。

最高経営責任者(CEO)を務めるPat Gelsinger氏
最高経営責任者(CEO)を務めるPat Gelsinger氏

 米本社の最高経営責任者(CEO)を務めるPat Gelsinger氏は「デジタル化の波であらゆる業界が変化する中で、IT部門やITリーダーの役割がますます大きくなってきている」と現状認識を示す。

 その上で、サイロ化せずにクラウドを導入することが、IT部門の責任者にとって最も重要な取り組みとしている。

 先日、パブリッククラウドサービス「vCloud Air」の日本での自社提供を停止し、パートナー経由に専念すると発表した同社。

 Gelsinger氏もそれに沿う形で、日本でのビジネスにおいて、パートナー経由の売り上げが大きく、富士通、NEC、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、ニフティなど140社のパートナーを交えたエコシステムを強化するとコメントした。

主なパートナー企業
主なパートナー企業

 ユーザー企業が恐れていることはチーム、スタック、セキュリティやコンプライアンスといった仕組みを、各部門でバラバラにつくってしまうこと――Gelsinger氏は、今回の事業戦略で背景になっている事情を説明する。

 「マルチクラウド環境を受け入れ、ロックインを避けながら、さまざまなクラウドを活用できる環境を利用者に提供する必要がある」(同氏)

 そのために、管理、ネットワーク、セキュリティをクラウド間で統合する制御プレーンを提供するのがVMwareとしての新たな戦略だという。

 具体的には、プライベートクラウドの構築において、ソフトウェア定義データセンター(SDDC)を提供することから始め、次のフェーズではSDDCをvCloud AirやvCloud Air Networkなどに拡張する。

 さらに、Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureといった他社のパブリッククラウドを含めたマルチクラウド環境やNSXのネットワーク仮想化環境、ハイブリッドクラウド環境を管理するための「vRealize」、AirWatchによる接続性、セキュリティ、視認性などを提供する新たな制御プレーンを展開していく。詳細について、2016年に発表する予定とした。

クラウド戦略の拡張
クラウド戦略の拡張

日本の成長率がワールドワイドの倍以上に

日本法人の代表取締役社長を務めるJon Robertson氏
日本法人の代表取締役社長を務めるJon Robertson氏

 日本法人の代表取締役社長を務めるJon Robertson氏は、日本の業績について「ワールドワイドの売り上げ成長率が12%(為替変動考慮の場合は9%)のところ、日本は2倍以上伸びている」と業績の好調さを指摘。グローバルでの成長率でも、ドイツを抜いて日本が3位に順位を上げた。

 ただ、「サーバ仮想化のvSphereはもう伸びていない」とのこと。数字をけん引しているのは、SDDC領域やNSX、AirWatchなど。

 SDDC、NSXの導入企業は新日鉄住金ソリューションズ、明治安田生命、みずほ情報総研、NTTコミュニケーションズ、朝日新聞社など。ビジネスモビリティではファミリーマート、バンダイナムコ、富士通、日揮などを挙げている。

 前日に開催したという日本のユーザー企業とのブリーフィングでは、来場した35人の多くが大企業のCEOレベルで、各社の従業員をすべて合わせると200万人に達するほどという。「ITが企業経営の課題になっていることを示すもの」との見解を示した。

NSXおよびSDDCと、AirWatchにわけて導入企業を紹介
NSXおよびSDDCと、AirWatchにわけて導入企業を紹介

 このほか、デジタル化の進展に伴う端末数の増加に対応し、ID管理を含めたプラットフォーム「VMware Workspace ONE」を提供すること、コンテナやマイクロサービスの利用を念頭においたAPI主導のオープンソースで開発が進んでいる「Photon Platform」を公開し、それをベースとしたPaaSソフトウェア「Pivotal Cloud Foundry」の提供に注力することなどに触れた。

 Pivotal Cloud Foundryを構成するのは、インフラレイヤではPhoton Platform、NSX、vRealize、その上で開発者やIT運用担当者が利用する開発実行環境ではCloud Foundry、その上のアプリフレームワークでは「Spring Cloud」「Spring Boot」、さらに上位でアジャイル開発を実践する場合の「Pivotal Labs」となっている。

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