さらに同氏はこう続けた。
「iPhoneと同じ発想で、ハイパーコンバージドインフラもITリソースを最適化してシンプル化し、ユーザーがプラットフォームであることを意識せずに、さまざまなアプリケーションを快適に使えるようにすることを最大の目的としている。このハイパーコンバージドインフラについて、クラウド向けなのかオンプレミス向けなのかとよく聞かれるが、どこに置いても構わない。重要なのは置き場所よりも、まずITインフラをシンプル化することだ」
要は、ハイパーコンバージドインフラは多くの企業の業務システムに必要な“モダナイゼーション”の道具立てともいえようか。この動き、大いに注目しておきたい。
「文理融合で経営とセキュリティ技術の関係における研究に注力したい」 (東京大学大学院 須藤修 情報学環教授)
東京大学大学院の須藤修 情報学環教授
東京大学が先ごろ、サイバーセキュリティ対策に関する研究プロジェクトとして2015年4月に同大学院情報学環内に設置した寄附講座「セキュア情報化社会研究(SiSOC-TOKYO)」グループの新たな活動として、東京・八重洲に専用オフィスを開設したと発表した。須藤氏の冒頭の発言は、その発表会見で、同プロジェクトのモットーである「文理融合」による取り組みについて語ったものである。
同プロジェクトは、セキュリティをはじめとするサイバー空間に関する課題について、大局的見地から学際的研究や人材育成、政策提言を行っていくことを主眼としている。とくに産官学の協力のもとに広く人材を募り、実際に生じている社会的かつ国際的な課題に対して、自然科学的なアプローチのみならず社会科学的なアプローチも取り入れて調査研究を行い、その検討結果を広く情報発信していくとしている。
そうした取り組みの中で今回開設した専用オフィスでは、学生や企業のセキュリティ担当者を対象にしたトレーニングの実践的演習環境(SiSOCサイバーレンジ)を構築し、高度なセキュリティ人材の育成を図る構えだ。加えて、IoT(Internet of Things)や金融とITの融合を図る「Fintech」などの最新技術に対するセキュリティ検証なども実施していく予定だ。
筆者が同プロジェクトに対して注目しているのは、活動の本格始動にあたって昨年8月に記者会見が行われた際、文理融合による取り組みをモットーに掲げていたことだ。
須藤氏はその際、「巧妙化するサイバー攻撃に対処するためには、高度なセキュリティ技術のみならず、組織の体制や経済システム、社会制度や慣行、さらには文化的な領域まで包含した文理融合の形で研究開発に取り組んでいく必要がある。その強い思いが、今回の活動の起点になっている」と語っていた。
果たして、文理融合については進展しているのか。今回の会見の質疑応答で聞いてみたところ、須藤氏は「文理融合の取り組みは着実に進めているが、まだ具体的な研究成果を示せる段階ではない」と言いつつ、冒頭の発言を続けた。マネジメントとセキュリティの関係は今後ますます大きな問題になる可能性が高いだけに、SiSOC-TOKYOの研究成果に注目しておきたい。