本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、大塚商会の大塚裕司 代表取締役社長と、IIJの勝栄二郎 代表取締役社長の発言を紹介する。
「セキュリティ対策から複合提案を広げていきたい」 (大塚商会 大塚裕司 代表取締役社長)
大塚商会の大塚裕司 代表取締役社長
大塚商会が先ごろ、2016年度上期(2016年1~6月)の決算を発表した。大塚氏の冒頭の発言はその発表会見で、上期での経験から、顧客ごとに複合提案を広げていくうえで、セキュリティ対策がきっかけになり得ることを語ったものである。
同社の2016年度上期の連結業績は、前年同期比で売上高が6.5%増、営業利益が3.3%増、経常利益が3.7%、当期純利益が8.9%増と順調に推移し、増収増益を達成した。売上高の内訳として、システムインテグレーション事業では複写機やPCに加えてセキュリティ対策の需要が増加し、前年同期比6.9%増となった。また、サービス&サポート事業ではオフィスサプライ通信販売が順調に推移したことから、同5.8%増となった。
2016年度通期の連結業績は、前年度比で売上高4.9%増、営業利益7.9%増、経常利益5.9%増、当期純利益6.2%増を見込んでいる。これを達成するため、大塚氏は「生産性向上や省力化に向けたソリューション提案」「景況感の鈍化を踏まえたコスト削減提案」「顧客との取引品目の拡大へ向けたクロスセルの強化」「光回線やネットワークソリューション提案の強化」といった施策に注力していくと説明した。
こうした施策における大塚氏の説明で、筆者が興味深く感じたのはクロスセルをめぐる話である。同社がかねて展開しているクロスセルは、顧客に対して例えば複写機だけを単品で提供するのではなく、同社が手掛けるさまざまな製品やサービスの中から“複合提案”を行い、きめ細かく顧客ニーズに対応していこうというものだ。
大塚氏は過去1年間のクロスセル活動の推移について図を示しながら、直近の2016年第2四半期で複合提案率が28.6%、複合商談率が22.6%であることを明らかにし、「クロスセルを広げる余地はまだまだ大きなものがある」との見方を示した。
大塚商会によるクロスセル活動の推移(出典:大塚商会の資料)