日本IBMは11月7日、クラウド事業戦略について説明した。IBMクラウド事業本部長である取締役専務執行役員、三澤智光氏は「日本においては、この3カ月間で、多くのIBMクラウドの導入が進んでいる。IBMクラウドが拡大していることを肌で感じている」と話した。
「クラウドで、コストとスピードを追求していくのはいまや当たり前。今後は、クラウドプラットフォームの上にイノベーションを実現するためのバリューを乗せることが大切」と同氏。IBMクラウドは、オープンスタンダードテクノロジーで作り上げているのに対して、AWSは16年前の技術をベースに展開しており、クラウドのベンダーロックインが起こり始めている一方で、IBMクラウドは、オンプレミスとの親和性、クラウド間の親和性に強みがある」と続けた。
アナリティクス、コグニティブ、IoTなどをプラットフォーム上に載せ、ソリューションとして提供していく考えだ。
「IBMはIaaSにおいて手を抜く考えはない。PaaSはIBMクラウドの差別化要素になる。PaaSに載るサービスが価値になる」
日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏
さらに、マネージドマルチテナントオフプレミスを提供する「Public」、マネージドシングルテナントオフプレミスの「Dedicated」、マネージドシングルテナントオンプレミス「Local」という3つのデプロイが可能であり、「高いセキュリティと規制要件に対応する柔軟な実装システムを実現でき、提供形態を問わずに一貫したユーザーエクスペリエンスを提供できる。これはIBMだけのものである」とした。
なお、SoftLayer(IaaS)と、BlueBox(Private Cloud)を「IBM Bluemix」ブランドに統合することを発表。IBMのクラウドサービスに多くのブランドがあり混乱が生じていたことに、PaaSとIaaSをブランドとして統合することで対処する。。
「SoftLayerの製品そのものがなくなるというものではない。IBMクラウドは遅れて参入したため、さまざまな会社を買収して、IaaSを構成してきた経緯がある。商談の際に、どれがIBMクラウドのブランドなのかを説明しなくてはならない状況にあった。AWSやGoogleにも、クラウドサービスごとに異なるブランドは存在しない。IBMも1つのブランドで展開することができるようになる」としている。
このほど、IBMでは、オールインワンアプライアンス「IBM Bluemix Local System」を新たに発表した。
IBM Bluemix Local Systemは、IBM PureApplication SystemとIBM Bluemixを組み合わせたプライベートクラウド向けアプライアンス製品。サーバ、ストレージ、ネットワークを1つのアプライアンスボックスとして提供することで、システムとして単純化する。BluemixのローカルエリアにおいてSoEを実現するとともに、IBM Pure Systemによって実現してきたSoRとつなぐことで、IBMクラウドサービスのすべてがそろうことになる。
一方、IBMクラウドの価値についても説明。クラウドネイティブ企業が注力しているのはIaaS、PaaS、SaaSという切り口によるものである一方、一般企業のクラウド活用が徐々に始まってきており、そうした企業においてはそれだけでは意味がなく、課題も残るとする。クラウドを導入してもデータのすべてがクラウドに上がるわけではなく、データのロケーションをどうマネージするのかが悩みとなっている。
また、セキュリティポリシーについてもクラウドとオンプレミスをどう統合していくのか、アプリケーションのポータビリティをどうするのかといった点も課題となっている。クラウドネイティブ企業だけではやりきれないものが多い。「IBMではハイブリッドクラウドの重要性を提唱しているが、IBMの価値はそこにあり、それがIBMが得意とする分野である」とコメント。「IBMは、コグニティブソリューションとクラウドプラットフォームの会社であることを掲げており、コグニティブの時代をクラウドプラットフォームで支えていくことになる」と述べている。