武下氏:(IoTなど新規事業は)外部から突いても無理で、それはコンサルタントや外部ファシリテーターの限界でもあるのですが、組織間の共創をでき、内に秘めた答えを引き出せる人や組織が、今一番必要かなと思います。
IoTは後付けであって、ある課題を解決するためにIoTをどう使うかということです。さっきの「まごチャンネル」も、「孫の顔をおじいちゃんおばあちゃんが見たい時に、テレビのチャンネルを回して、まごチャンネルがあれば見られる」という発想であって、テレビとSIMカードの2つだけからは生まれません。
ZDNet:製造業はいかがでしょうか。

東洋ビジネスエンジニアリング ソリューション事業本部 IoTエンジニアリング本部 本部長 志村健二氏
志村氏: IoTで製品を作るところには、いろいろな種類の人が要ります。製造業の現場でわれわれの培ってきたものから言うと、全体をちゃんと把握できる「鳥の目」を持っている人が必要です。
マーケターであり、全体を把握して、顧客の課題と実施者の課題を分かっていて、「こういうものを作ったら絶対に役立つ」と信じてやまない人ですね。アイデアと仮説をいつも考えながら伝えられる人がいること。それがなければビジネスも始まらないし、会社のカイゼンも始まりません。われわれの会社にも必要だし、顧客にも必要だと思っています。
あとは、「虫の目」として会社のことをよく分かっている人です。工場ごとの売り上げや、製品・品質、原価管理や、儲かっているところをABC分析していて、ダメなところを数字として知っている人。
要するに、会社がどこでカイゼンできて、どこにお金を回せるかを見ていて、社内調整ができる人です。ただ夢を描いても会社は動いてくれないので、その部分をサポートしてくれる人が、社内を推し進めるには必要です。
もう一つ、「魚の目」の人も必要です。今どういう技術があって、その技術と会社がやりたいことを組み合わせると何ができるか、という流れが見える技術トランスレーターになる人です。
これらの人がいないと、IoTに限らず、新規のビジネスはできないのかなと思っています。鳥の目、虫の目、魚の目の3人が同じ組織にいて、同じ方向性を持って進めれば、事業が立ち上がるという気はします。ただ、Exitプランとして、ダメになった時にどうするかも考えておかなければなりません。
製造業では相談に来る人のほとんどが「IoTで何ができるの」というところから始まっているので、「どこが課題ですか」と話を紐解いてあげる、顧客が心で思っているものを出せることが、ものづくり分野でIoTで進めていくには必要と思っています。