より賢く活用するためのOSS最新動向

オープンイノベーションとOSS--コミュニティ参加の効用 - (page 2)

吉田行男

2017-06-09 07:00

 一方、もう一つのIT導入の目的である「情報化」とは、人間が担っている意思決定プロセスに対して「ITによって有用な情報を提供し、意思決定を支援する」ということを表しています。

 当初は、この「自動化」することを目的として、企業の従来型の業務システムである「SoR(System of Record)」と呼ばれる領域でITは主に活用されてきました。

 しかし、近年では、「SoE(System of Engagement)」と呼ばれている企業のビジネスプロセス革新や新ビジネス創造などのデジタル革新を実現する分野での活用が進んできました。まさに「情報化」の領域に入ってきました。

 この分野では、「クラウド」「ビッグデータ」と呼ばれる領域のソフトウェアを活用することが必要になってきます。この領域のソフトウェアは非常に多くの機能を実現することが必要であり、単一の企業で開発することは大変な困難な状況になってきました。

 そのような問題意識の中で、旧来のソフトウェアベンダーは、当初からソフトウェアをOSSとして開発する方法に変わってきました。その代表的なOSSが「OpenStack」です。


 OpenStackは、2010年に米RackspaceとNASAがそれぞれ自社利用をするために開発していたソフトウェアをOSS化したものです。開発の趣旨に賛同する企業を集めてFoundationを設立し、このFoundationを核にし、開発を推進することになりました。

 当初は、1年に4回ずつという高頻度でリリースしていましたが、途中から年2回のリリースに変更になりました。

 また、機能の開発にあたっては、Design Summitと呼ばれるカンファレンスを実施し、オープンな環境で開発する機能について議論してきました。

 当初Design Summitと呼ばれていたカンファレンスも利用者が増えてくるに従い、単なるSummitと名前を変え、開発内容だけではなく、活用事例なども公開する形で実施されています。

 このプロジェクトの興味深いところは、ソースコードの修正である「コミット」数などの統計データを公開していることです。OpenStackにかかわる企業は、自社のセミナーでその公開されている統計データを活用し、自社がいかにOpenStackの開発に貢献しているかを競い合っています。

 このように製品やサービスを提供するベンダーは、自社の技術力を示すために、いかにコミュニティに貢献しているかを競争する時代になってきました。

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