筆者は自分が最高情報責任者(CIO)だった頃を振り返ると、当時はレガシーシステムに取り囲まれており、運用モデルや運用フレームワークは、古い理論に基づいていた。やっと思い通りにできるようになってきたと感じ始めた頃、「デジタル化」と呼ばれるものが起こった。その結果新しいビジネスモデルや新しい技術、以前よりずっと強力になった顧客に取り囲まれ、一歩前に進むと、二歩戻ったように感じるようになった。
しかし今やCIOには、自らの業務にバランスをもたらす最高のチャンスが訪れつつある。史上最高のチャンスと言ってもいいかもしれない。必要なあらゆるものがそろいつつあるのだ。
テクノロジ支出は増えつつあり、史上初めて世界で3兆ドル、米国では1.5兆ドルを超えようとしている。新興技術は本当の価値を生み出しつつある。人材はいるが、人材とどのように関わり、どのように育て、どう組織にとどめておくかについては、柔軟に対応する必要がある。オートメーションとAIは労働力を補完しており、効率は向上し、得られる知見の水準も上がっている。アジャイルやDevOpsなどの運用フレームワークは、対応のスピードを上げながら品質を向上させることに成功している。
これらの取り組みが積み重なって、企業に価値をもたらす、ネットワークとの接続を生かした、機動力の高い技術が生まれている。Forresterは、もし適切に取り組みを進めれば、2018年のCIOはこの「顧客の時代」に企業が成功するためのテクノロジとサービスを提供することができ、最高デジタル責任者(CDO)の役割を廃れさせる可能性もあると予想している。例えばForresterは、2018年のCIOの役割について、次のような予想を発表している。
- デジタルビジネスプラットフォームが一般的になり、企業はプラットフォームを構築するか、プラットフォームを利用して製品を提供するかのどちらかに分かれる。その両方を行う企業は少ない。いずれにせよ、CIOはプラットフォームの基盤となるテクノロジとサプライヤーの関係性を調整し、企業がプラットフォームをベースとしたビジネスのアプローチを管理できるようにする必要がある。これには、クラウドとオープンソースソフトウェアの活用に全面的に取り組む必要があるとともに、パートナーのネットワークと接続するためのコアコンポーネントとして、APIとマイクロサービスの上に構築される新たなアーキテクチャに投資する必要があるだろう。
- 数年間の経験を通してアジャイルとDevOpsを身につけたCIOにとって、2018年はその経験を生かして、会社全体を巻き込み、顧客へのこだわりを徹底した製品提供を推進する年になる。CIOは配下の優秀なITリーダーを活用してこの取り組みを支え、この活動を通じて事業部門とIT部門の関係性は改善される。最高経営責任者(CEO)や役員会は商品を市場に出すまでの時間の短縮を指向し、CIOの地位も向上する。
- ベンチャーキャピタルは、企業をポートフォリオで管理しており、ポートフォリオの企業の製品やソリューションが消費者に支持されると利益を得られるが、CIOはその手法から多くを学ぶことができる。2018年の可能性を理解したCIOが進めるべき最初のステップは、一連のテクノロジや利用事例をポートフォリオとして横断的に捉え、新たなテクノロジの追跡、テスト、実装を進めていく、ポートフォリオ型の管理アプローチを導入することだ。また第2のステップは、イノベーションのエコシステムを活用することだろう。最後に、CIOはこれらのテクノロジを、ビジネスモデルの大きな変更(サブスクリプションモデル、プラットフォームの利用、予測の活用など)を支えるために活用すべきだ。
これらは大きな変化ではあるが、この進歩を実現したCIOは、企業内でのテクノロジに関する実権を握ることになるだろう。これによって、CIOとそのチームの地位は向上するはずだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。